地域と連携したインクルーシブ教育モデル構築に関する実証的研究 特別支援教育専攻・教授 河相 善雄

研究計画・方法

【平成23年度】
 まず、包括的・総合的なインクルーシブ体制の具体的なイメージを素描する。この時、現行制度にとらわれず、関係機関の教職員・指導員・専門職員等及び保護者からサンプル的に聴取りにより意見の収集を行う。素描されたイメージから現行制度上、実現不可能な事項を削除し、予算・人材面で不可能な事項を別枠でとらえる。適切な状況が得られれば、すぐに実施に移せるよう、内容・方法に関しての検討は並行して進める。意見収集はメンバーで分担して行うが、分析は連携態勢の分担に従って行う。なお、事項の削除・除外の判断は行政関係担当を交えて検討する。
 具体的には特別支援センターを設置する療育施設として加東市にあるわかあゆ園を想定している。まず、対象を義務教育段階に焦点を絞り、それ以外の年齢層に関しては、対象に組み込むかどうか検討した上で対処する。インテークから相談、診断、アドバイス、具体的な支援方策と療育状況の情報の授受等の手順について検討する。同時に連動する支援サービスの決定方法と主軸となるコーディネーターと他のコーディネーターの役割分担等について検討する。併せて市の特別支援協議会との連携態勢も整理しておく必要がある。システム的な検討は研究統括を交えて検討する。
 上記のような実際的システムを構築すると並行して、統合的環境整備に関して有効な体制を整備している自治体の事例を3~5例程度視察する。また社会的にインクルージョンが成熟していると言われるデンマークの実態を調査する。
 研究会には文部科学省からアドバイザーとして、丹羽特別支援教育調査官にも参加いただく予定である。また必要に応じて特別支援教育課長にもアドバイス等の了解をいただいている。

【平成24年度】
 前年度末までに決定しておいた特別支援センターでの対応手順、各領域コーディネーターとの連絡調整体制、専門的職員の対応手順(常駐方法等)、地域支援体制とスケジュール、専門家チームやスーパーコーディネーター等の活動内容と各種手順等に従って特別支援センターとしての活動を開始する。
 センター主催で各領域コーディネーター代表者による状況報告会を開催する。頻度は2ケ月に1回程度とし、研究データ収集には12月までを目処に対応する。この会合では各領域コーディネーターが対応している事例についての情報交換、行政各部局との連絡調整、センターの活動内容・方法の在り方等について、審議する。研究会メンバーもオブザーバーとして出席する。
 研究会主催で学校・療育機関関係者・コーディネーター等による特別支援教育連絡会を開催する。頻度 は3ケ月に1 回程度とし、研究データ収集には12月までを目処に対応する。この会合では、特別支援教育コーディネ一夕ーが対応している事例について情報交換を行い、また関与の方向性・指導の方向性について検討を行う。事例を巡る学校一療育機関、学校内での連携の在り方を模索し、また具体的指導方法等についても検討する。地域支援の在り方等についても扱うこととする。必要に応じて頻度を高めることも可能とする。
 これらを通じて、包括的な相談ニーズに対応しながら、有効な体制構成・人材活用方法の模索を行い、 効率的な特別支援への課題を探る。オブザーバー等の対応は基本的には研究会メンバーのローテーションで行うこととするが、必要に応じて連携担当者が専任で担当することも考慮している。
 外国のインクルーシブ体制実態調査(デンマーク・中国・台湾・韓国、各5日間程度、要通訳) についても実施する。調査項目は検討中である。
 学会報告については、年度中には結果の集約・考察が間に合わないことが予想されるので次年度に行う公算が強い。なお、年度末には報告書をまとめ、印刷する。

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