認知科学的手法に基づく文章作成力向上のためのプログラム開発 教育内容・方法開発専攻 文化表現系教育コース[言語系教育分野(国語)]准教授 菅井 三実

研究計画・方法

【平成23年度】
 本研究が掲げる次の2つの研究目的のうち、平成23年度は第1の目的に一定の目処を付け、平成24年度は、第1の目的を仕上げるとともに、第2の目的を達成する計画である。
  ① どのような要因が「分かりやすい文章」であることに関与するかを整理する
  ② それらの要因が学校現場での文章指導にどのように応用可能であるかを明らかにする
 研究組織として、研究代表者および研究分担者のほか、現職教員4 名に研究協力者としての参加を仰ぐこととする。研究協力者は、過度な負担を避けるため、研究報告書等の執筆には加わらないこととした。
 平成23年度の具体的な計画は、次の通りである。
 これまで断片的に記述してきた諸要因を整理し、体系化を図るとともに、初等中等学校レベルでの指導に使いやすいように、形式と文言を整えるところまでを目標とする。具体的に本研究が着目するのは、「近接の要因」「視線の滑らかさ」「空間から時間への写像」等といった認知的な諸要因であり、これらの背景にある理論の解説と併せて、できるだけ具体的実例を豊富に付けるように努める。その過程で、小学校から中学校にかけての年代に対する作文指導への応用を視野に入れた検討会を開催する。この検討会には、本学大学院を修了した小学校教員と中学校教員から協力の内諾が得られている。この段階に約5ケ月(平成23年10 月~平成24年2月)を充てる。
 平成23年度に要する主な経費は、備品として、認知科学および文章構成に関する最新の図書、会議プレゼン用の端末のほか、研究分担者との打ち合わせのための旅費(東京1回、京都2回、沖縄1回)と、学内で現職教員との検討会を開催するための旅費と謝金(現職教員4 名× 6 時間×5,000円)を計上した。また、本研究計画では、知覚的な特性を多く取り上げることから、イメージ図式を視覚的に表現するため、編集用のアプリケーションと、大きな容量を共有するためのSDHCカードの経費を計上している。

【平成24年度】
 平成24年度は平成23年度中に残した第1の課題を達成するところから始まり、第2 の課題の達成を図る。
 平成24年度の前半は「調査研究」の段階であり、平成23年度に整理した諸要因が学校現場での文章指導にどのように応用可能であるかを明らかにすることを目標とする。これまで申請者が大学と専門学校レベルで実践してきた指導法を初等中等教育レベルにアレンジした上で、研究協力者(初等中等学校教員)の勤務校(兵庫県姫路市および明石市)において、実際の文章指導に上述の諸要因を導入し、その理解度と効用を検証する。実践の中で得られたデータは、アルバイト学生によって文字入力し、効果の詳細を分析する。この段階に約5ケ月(平成24年4月~平成24年8月)を充て、旅費・アルバイト謝金を計上する予定である。
 平成24年度の後半は「標準化」の段階であり、諸要因と実践結果を総合的に考察し、一般的に使いやすい形に再整理する。第1段階で導かれた体系化や内容は、その全てが初等中等学校のレベルで理解されるとは限らず、校種別(発達段階別)の配置を考慮することや、文言の平準化も必要になることが予想される。そうした修正作業が第3段階で行われる。最終的には、簡単なマニュアル書のような形で公開することを目標とする。この段階に約5ケ月(平成24年9月~平成25年1月)を充てる。
 以上の計画を実行する中で、先験的な理念やスローガンに幻惑されることなく、あくまで経験事実の観察と記述に基づいて一般化を図るという基礎研究の研究手法が教科教育に適用される。

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