反転授業でのデジタルコンテンツづくりを始めとして、さまざまなアクティブ・ラーニング(AL)型授業づくりとその授業実践 教育方法・内容開発専攻 認識形成系教育コース・教授 吉岡 秀文

研究目的

(1) 研究目的

 一方的な知識伝達型講義の聴くという「受動的」学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習をめざすことを目的として行う。能動的な学習には、書く・話す・発表する等の活動の関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴うと定義づける。なお、「認知プロセス」とは、近く・記憶・言語・思考(論理的・批判的・創造的思考、推論、判断、意思決定、問題解決など)といった心的表象としての情報処理プロセスを指す。手始めに、完全習得型の反転学習の実践にとりくむ。反転学習は一般に「説明型の講義などの基本的な学習を予習として授業前におこない、個別指導やプロジェクト学習などの知識の定着や応用力の育成に必要な学習を授業中に行うことで、知識の定着や応用力の育成に必要な学習を授業中に行う教育方法」を指す用語である。従来の授業相当分の学習をオンラインで授業前に行うことで、知識の定着や応用力の育成を重視した対面授業の設計が可能になる。

 反転授業のなかの、「完全習得学習型」の方法に、最初に取り組むために、講義の内容のデジタルコンテンツを自ら作成することに取り組みたい。さらに、発展的には「プロジェクト型授業」や「課題探究型授業」などにも実践的に取り組みたい。

(2) 当該分野におけるこの研究(計画)の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 完全学習型の「反転授業」自身には独創的な点はないが、本学でのシラバスを見る限り、積極的に「反転授業」を取り入れている講義は見当たらなかった。本学の中だけで見れば、最初の取り組みといえるのではないかと考えている。予習用のデジタルコンテンツは既存のものが様々存在するが、統一性や汎用性がなく、実際的に使いにくいものも多いので、改良していき、より使いやすく有効的なものを作り、反転授業の取り組みが充実させることができる。さらには、プロジェクト型授業や課題探究型授業への取り組みにも展開できるので、さらに多様な実践活動を行うことにつながることが期待される。

(3) 国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 文部科学省は来年度、未来型授業「課題解決型学習(アクティブ・ラーニング、AL)」の指導法を研究・開発する「次世代型教育推進センター」を新設する方針を決めた。全国から指導力のある優秀な小中学校教員約10人を専属スタッフとして配置する。小中高校の次期学習指導要領では、ALの充実策が盛り込まれるが、授業法がまだ確立されておらず、一部の学校が試行錯誤しながら取り組んでいるのが現状だ。このため、国が主導して研究・開発を進め、全国への普及を図る方針だ。ALは、児童・生徒が自ら課題を見つけ、互いに意見を出し合いながら教員も交えて解決策を探る授業法。思考力や表現力、協働性の育成に効果的とされる。文科省は2018年度以降、小学校から一部先行実施される次期学習指導要領の中にALの充実を盛り込む予定だ。だが、従来の授業は教員が知識を一方的に教え込む形式が主で、ALのような「双方向型」授業は歴史が浅い。タブレット端末などICT(情報通信技術)機器を活用した指導力も求められる。このため同省は所管する「教員研修センター」内に「次世代型教育推進センター」を設置し、研究・開発を進めることにした。

(着想に至った経緯等、研究の背景について)

 申請者自身は小学校から大学院に至るまで知識伝達型授業で育ってきたので、自身の授業でも逆に同様な知識伝達型授業を学生に実践してきたわけであるが、最近特に、学生の受動的な授業態度に、大いに疑問を持つようになってきた。一方で、2000年代後半から米国の初等中等教育を中心に反転授業という取り組みが広がり、数年前から日本の大学教育でも取り組みが拡がっている。文科省も現在アクティブ・ラーニング(AL)の取り組みを盛んに様々なところで推奨している。

 そこで、申請者はALの取り組みに非常に興味をもつようになってきた。本年2月に関西大学で行われた「FD関連事業「反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?」に参加し、3つの講演とポスターセッション等に参加して、その細かな実践的な取り組みを学んできた。その後、まず手始めに「完全習得型の反転授業」に取り組むために、数コマの講義のコンテンツを作成して、受講者にはオープンしてみた。試行的にはうまくいきそうである感触が得られた。既存のデジタルコンテンツも様々に存在する中で、自作に拘る理由は、既存のものは、使い勝手が良くなく、汎用性に乏しい等の問題点が山積しており、そういう点を実際に実践して使って、受講者の反応やニーズに合わせて、より良い物に改良してゆく必要がある。さらにはあらゆる講義やゼミ等に対しても、既存のものを取捨選択しながら独自のデジタル教材を作り、反転授業の予習コンテンツとして利用していくことを積極的に推進してゆきたい。学生自身にも、自ら様々なデジタル教材を作らせることで、独自に反転授業を実践できるように積極的に指導して、学生の実践力を育成してゆきたいと考えている。

 さらには、反転授業にとどまらず、プロジェクト型授業や課題探究型授業に取り組むことで、ディープ・アクティブ型の授業展開を追求してゆきたい。

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