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令和3年度大学院連合学校教育学研究科学位記授与式式辞

 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科、令和3年度課程による博士の方22名、論文による博士の方2名の皆さま、学校教育学の博士号の授与、本当におめでとうございます。構成6大学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。今年度は課程博士が22名と例年より多くなっております。滋賀大学、岐阜大学にご参加いただきまして3年がたちますので、その成果が如実に表れていると思います。教員養成系博士課程としての本連合大学院の博士人材輩出の機能は一段と高まりました。

 皆さまの博士号取得のプロセスにおきまして、直近の2年間は予想しなかった事態であったと思います。コロナ禍です。いろいろご苦労があったと思います。他方で、オンラインによって遠距離の移動がなくなったことで、利便性や効率性が高くなったのではないでしょうか。こうした学びや研究のスタイルはポストコロナになりましても続きますので、皆さまがこれから研究指導を行う側に回ったときに、この経験をぜひ生かしていただきたい。

 さて、博士号を得まして、これから新たな人生をつくられる皆さまに対しまして、変化に対応する研究の必要性についてお話したい。VUCAの時代といわれております。これは変化が激しい社会であるだけではなくて、先の予想ができにくい、何が起こるか分からない、想定外のことが起こる時代です。このことは最近のいろいろな事案を見ても、実感されているのではないかと思います。そこでは、これまでの常識が通用しないことが多々あります。正直申し上げまして私も今、大学経営にあたっておりますが、そういうことを実感する日々です。

 学校教育に関わる幾つかの例を申し上げてみます。ご存じのように学校教育のDX、デジタルトランスフォーメーションが急速に進んでおります。それは、1人1台の端末の配備によって可能になりました。子どもたちの学びと育ちが、デジタルのデータとして記録されます。いわゆるスタディ・ログですね。それが学級単位とか、教科単位とか、学年単位とか、学校単位で蓄積されてビッグデータになります。AIがそれを解析します。これをもとに、教師は指導の方法や学級経営の改善、校長は学校運営の改善を行うことが求められます。研究者は、これまで主としてアンケートやインタビューによってデータを得てきましたが、これは今後も続くとは思いますが、これに加えてスタディ・ログ等によるデジタルデータを収集・分析・活用することが必要です。そういうプロセスの中に入っていける能力とネットワークが研究者に求められます。

 オンラインによって学校・家庭・地域・職場などの離れた場所が結ばれるようになりました。これが進むと究極的にはですが、子どもや教師が特定の学校に所属する必要がなくなることさえ想定されます。これまでの常識であった一つ一つの学校を単位とした教育活動や学校運営とは異なる、新しい学びや教育組織の運営方法を研究者が提示する必要があります。

 予測のつかない変化に対応するには、組織や集団が多様性に富むこと、つまりダイバーシティが求められます。それを促進するのがインクルーシブ教育です。インクルーシブ教育は全ての教師に必須とされておりますが、インクルーシブ教育の研究の比重や重要性はますます高まることは間違いありません。ぜひ、こちらにも目を向けていただきたい。

 このような変化に対応する研究が求められる一方で、教師としての倫理性や使命感など、教師に求められる不易の資質や素養といったものの重要性は変わりません。激変する環境下において、あるいは多様化する価値観の中で、教師に必要とされる素養や資質を育成する方法も新たな研究課題となるのではないでしょうか。

 例えば以上のような新たな研究テーマや課題に果敢にチャレンジする研究者になっていただきたい。もちろん、取得した博士号の研究テーマを今後もさらに深めていただくことは重要ですし、ぜひ継続していただきたいと思いますが、併せて変化する課題に対応する研究も行わないと、皆さまの研究の社会的な有用性は高まりません。もとより博士号取得は、研究者としてのゴールやターミナルではありません。そうではなくて、これから新しい研究を遂行するための能力証明として、われわれは博士号を出しているのです。そのことを改めて確認いただきたいと思います。

 最後になりますが、博士号を取得をされた今日、研究倫理を順守することを改めてお誓いただきたい。ご存じのように、盗作や剽窃、実験データの改竄であるとか研究費の不正であるとか、そのような研究倫理にもとる事案が現在も後を絶ちません。一度やってしまうと研究者人生は終わりますし、これまで支援や指導してくれた方々全てを裏切るということになります。ゆめゆめ、デジタルトランスフォーメーションを研究不正に使うことがあってはなりません。

 それでは、皆さまが博士号を得て新たな人生をつくり、研究による皆さまの社会貢献が進展しますことを祈念いたしまして私のお祝いの言葉とさせていただきます。本当におめでとうございました。

令和4年3月21日 兵庫教育大学学長 加治佐哲也

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