日本の新しい地方教育行政をリードする人材育成

教育変革期における地方教育行政のリーダーの役割はますます重要なものとなっています。 未来を創る子どもたちの教育に加え、地方分権化社会における新たな地域社会を創り出すために、教育行政の役割はかつてないほどの転換期を迎えています。 そのような中、教育政策リーダーコースは日本で初めてとなる、現職教育長や将来の教育長候補および教育行政の幹部の養成コースです。多忙を極める学生のために、 学修形態を教員が地元に出向いて行う授業や双方向のオンライン授業、VOD(ビデオ・オン・デマンド)による視聴学習、神戸市のサテライトキャンパスにおける集中演習とし、学生の業務への影響軽減を図るなど、学びやすいものとしています。 また、海外、自自治体首長部局・教育機関、他自治体等で実習を行う実習科目も充実しており、教員と実習先のメンターとの綿密な連携と指導により、地域教育行政の変革を推進し得る資質能力の獲得を図ります。

担当教員一覧

教授 堀内 昭彦
(研究分野:教育行政、教育課程)

堀内昭彦先生写真

地方教育行政の歴史の変遷において、戦後の教育改革から1990年代の地方分権改革を経て、首長との関係性が極めて重要となった現在の教育委員会制度に至り、教育長にはどのようにして民意を反映した政策を実行していくのかということが求められています。このような経緯を踏まえ、平成28年度に本コースは日渡円初代コース長の下、新たな教育委員会制度における教育長に変革型の実践的応用力を身に付けるための工夫を凝らした4つの領域によるカリキュラムを備えたコースとして創設されました。私はコース長としてコース運営に関わる業務を行っています。また、過去文部科学省で約20年間、主に初等中等教育を中心に教育課程の基準に関わる行政事務を経験してきました。これまでの実務経験を生かして、教育課程、教育行政について研究を行っています。

教授 澤野 幸司
(研究分野:教育行政、コミュニティ・スクール)

堀内昭彦先生写真

地方教育行政の組織及び運営に関する法律の教育委員会制度一部改正から10年が過ぎました。教育政策のトップである教育長は、「直接民意を受けた首長の教育への期待」と「独立した行政機関のトップとしての専門性の発揮」の間で、日々2つの正統性を鑑み、各自治体における教育政策の立案・実施・評価をこれまで以上に努める必要があります。本コースには、卓越した知見を有する教授陣や志高い学修者や修了生のネットワークがあります。この強みを最大化する手立てを常にブラッシュアップしながら講じると共に、学修者お一人お一人にとって意義ある学びを提供できる環境づくり向け、教育長経験を活かして尽力したいと考えています。

准教授 押田 貴久
(教育分野:教育政策)

自治体の教育政策過程の研究をしています。特に教育長や指導主事の政策形成への関与に注目しています。また制度がアクターに及ぼす影響を学習指導要領と自治体や学校独自の教育政策・実践を事例に研究しています。 教育政策リーダーコースは,教職大学院の位置付けのため「修士論文」はありませんが,2年間の様々な学びの集大成を教育政策課題研究として「政策提言書」にまとめます。そこでは,教育長等トップリーダーの視点で,自自治体や自身の教育政策上の課題を探究し,斬新で実効性の高い打ち手となる政策を構想することになります。教育政策を形成するための様々な視点を現場の実態に沿いながら支援できればと考えております。

准教授 菅野 祐太
(研究分野:教育行政)

2011年の東日本大震災を機に岩手県大槌町で教育行政の仕事に携わり、これまで教育大綱の策定や教育基本条例、県立学校改革等の仕事をしてきました。分権改革・教育委員会制度改革以降、地方教育行政の役割は非常に重要なものとなってきています。またこれまでにない視点の深さと広さも求められるようになっています。 私も本コースの卒業生の一人です。政策を考える際の原理原則を捉えなおすことはもちろんのこと、みなさんの業務を棚卸ししながら、新しい在り方や打ち手を考える実践的な学びの一助になれればと考えております。普段仕事をされながらの学修になるかと思いますが、お支え出来れば幸いです。

授業内容紹介

開講授業一覧

共通基礎科目
授業科目名 教授名
カリキュラム・マネジメント 天笠茂
多様な授業方式・形態とその支援体制 藤川聡
生徒指導の学校体制と教育委員会の危機管理 新井肇
特別支援教育の実際と改善課題 今中博章
地域教育経営と教育委員会の学校経営改善施策 露口健司押田貴久
現代教育の理念と背景 水本徳明
地域と学校 菅野祐太、 澤野幸司、 貝ノ瀨滋
専門科目
授業科目名 教授名
教育行政マネジメント特論演習Ⅰ(情報収集・分析・構想) -
教育行政マネジメント特論演習Ⅱ(企画・実行・判断) -
教育行政リーダーシップ特論演習Ⅰ(組織人事) -
教育行政リーダーシップ特論演習Ⅱ(理念浸透) -
教育政策実践論 押田貴久、冨田明徳、細田眞由美
教育行財政の立案と分析 堀内昭彦加治佐哲也小川正人
地方自治体行政論 青木栄一阿内春生 大畠菜穂子
教育法規の理論と実践 葛西耕介、 澤野幸司
教育政策・教育行政特論 合田哲雄
生涯学習特論 押田貴久、 冨田明徳、 澤野幸司
学校論 水本徳明
比較教育政策論 堀内昭彦、 澤野幸司、 押田貴久菅野祐太Markku Antinluoma匝瑳岳美矢田匠
教育政策課題研究 堀内昭彦、 澤野幸司、 押田貴久菅野祐太小川正人露口健司葛西耕介天笠茂藤川聡水本徳明、 遠藤洋路、細田眞由美
教育政策トップリーダーインターンシップⅠ(海外教育行政機関) -
教育政策トップリーダーインターンシップⅡ(自自治体行政機関) -
教育政策トップリーダーインターンシップⅢ(自自治体教育機関) -
教育政策トップリーダーインターンシップⅣ(他自治体) -
教育政策トップリーダーインターンシップⅤ(自自治体等発展) -
ピックアップ授業
地域と学校
社会総掛かりの教育を実現するため、教育行政トップリーダーとして、地域と学校の関係性を客観的に捉え、課題を把握し対策能力を形成することを目標としている授業です。先進的な自治体に訪問し、フィールドワーク調査を行ったり、教育長とこれからのコミュニティ・スクール行政の在り方を議論したりと実践的な学びを積み上げる授業です。
教育行政特論演習(リーダーシップ・マネジメント)
教育行政特論演習では、教育行政トップリーダーに必要となる資質・能力のうち身につけた知識の応用力を涵養するために演習を中心としたセッションを行います。情報収集、分析および構想、理念共有等を実際のケースを元に議論をしながら自らの思考の癖やあるべき思考について考えていきます。

修了生紹介

政策リーダーコースには現職で学びに来られている方々が多くおります。 また本コースで学ばれた院生の声をご紹介します。

修了生の声

杉本 真紀子
(東京都稲城市教育委員会 教育長)

教育政策リーダーコース生として経験した深い学びと、志を同じくする仲間達との出会いは、私にとってかけがえのない財産です。多様なカリキュラムの履修に際し、著名な先生方からの鋭くも示唆に富むご指導と、仲間たちとの協議を通し、自らの実践を振り返りつつ展望を整理していく作業は、貴重な学びの時間でした。また全国各地で活躍する同期生たちとは、出張講義や集中演習等の際に親交を深め、修了後の現在も交流し、学び合っています。

修了後、教育長を務めることとなりました。教育のあるべき姿について考察したり視野を広げたりした学びの日々を思い出しながら、日々の職務に取り組んでいます。このコースに学んだからこその見方考え方をフル活用し、教育施策を推進していきたいと思います。

在籍院生の声

久保ひろみ
(福岡県築上町教育委員会 教育長)

コロナ禍を経て、少子高齢化や生成AIの飛躍的な進展など、教育を取り巻く社会の急激な変化を実感しています。すべての子どもの可能性を引き出す新しい時代の教育を実現するためには、知識や経験のアップデートが必要であると考え、本コースに入学しました。第一線でご活躍の先生方による出張講義や集中演習では、最新の専門知識や理論を学ぶことができ大変充実しています。また、教育行政マネジメント特論演習では、自分自身の思考傾向を知るとともに、参加者の多様な考えに刺激を受けています。日々の業務やレポート作成に追われながらも、学ぶことの大切さ、学ぶ喜びを感じているところです。同じ志をもつ院生たちと互いに学び合い、学修を深めていきたいと思っています。

政策提言書(修了生レポート)

本コースでは、卒業時に修了レポートを提出します。これまでの卒業生おも多くの教員の指導や同じ院生との学び合い・支え合いによってつくりあげてきました。 ここでは修了レポートのタイトルをご紹介します。
専門科目
レポートタイトル
2023年度
修了生
(7期生)
教育格差を縮小し、すべての子どもたちにとって学校が魅力あるものとなるために必要な視点と施策
-貧困の連鎖を止め、ウェルビーイングが循環するまちをめざして-
教育委員会における「こどもの意見表明と尊重、施策への反映」
子どもの当事者意識を育てる教育から取り組むまちづくり
-子どもが意見を言える・参画できることを位置づけた「教育振興基本計画」の策定を目指して-
教育を核にした過疎地自治体の地方創生
-学校ガバナンスの新しいあり方で実現する高校・地域の協働による相互の魅力化-
小規模自治体における
「教育を核とした地域コミュニティづくり―その体制構築のための諸条件―」
総合教育会議と教育委員会運営に関する一考察
地域自治と共創を形成するための地域の拠点となる学校づくり
~児童・生徒の社会参画への実践力を育むカリキュラム開発を通して~
小規模教育委員会が主体性を発揮し、自律的学校経営を支援する組織の在り方
就学前教育保育の質の向上に向けた施策パッケージに関する提言
~子どもたちが主体となり自らが創造する教育保育をめざして~
2022年度
修了生
(6期生)
GIGA スクール構想と関連させた「主体的、対話的で深い学びを実現する」授業改善施策
―教育委員会の組織、学校支援の在り方について―
次代を担う管理職の確保と育成
一教頭の多忙化解消と職の魅力化をめざして一
宇治市における小中一貫教育~次のステージ~ ー学校を支える教育委員会の支援ー
学校部活動から学校を拠点とした地域クラブ活動への移行
一杉並区における新たなスポーツ・文化芸術活動環境の構築を目指して一
新しい時代の生涯学習社会における次世代型学校・地域のあり方について
ー次世代型校長 (Transformational Leadership) による 「スクールガバナンスの強化」 と地域の分散リーダーシップ の促進による 「豊かなソーシャルキャピタルの形成」 一
京都市教育委員会事務局指導部生徒指導課の組織および指導主事育成のあり方
働き方改革とのデュアル・アプローチで推進する女性管理職の登用 一女性校長へのインタビュー調査を通じて一
A市における校内適応指導教室の設置による不登校支援の検討
日高町における地域とともにある学校教育の構築を目指して
一校長が主体的で自律的な教育活動を推進するために学校運営協議会をどのように活用して取り組ませるかー
義務教育学校開校前後の取組の成果と課題一義務教育学校の経営から見る今後の帯広市小中一貫教育一

在籍学生数と属性

本コースでは教育行政・学校・一般行政・民間企業等多様なバッググラウンドを持つ方々が学んでおります。 ここでは本コースで学ばれている方々の属性をご紹介します。
※2024年4月時点
機関 役職 2021年度入学生 2023年度入学生 2024年度入学生
教育委員会 教育長 4 1
教育委員会 事務局職員 2 2
その他行政 1 1
学校 校長 1 2 3
学校 副校長・教頭 2 3
学校 教員 1
学校 事務職員
社会教育施設 1
その他 2 1

入学・入試について

本コースにおける学費や入試情報は以下のWEBサイトをご覧ください(外部リンク)
1. 学費情報 (外部HP) https://www.hyogo-u.ac.jp/campuslife/fee_pay.php
※本コースは、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金の対象講座に指定されています。対象となる方は入学料や授業料の一部についてハローワークから支給を受けることができる場合があります。
https://www.hyogo-u.ac.jp/campuslife/kyoikukunren_senmon.php

2. 入試情報 (外部HP) https://www.hyogo-u.ac.jp/admission/master/request.php

アクセス


〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1-5-7 神戸情報文化ビル3階
国立大学法人兵庫教育大学 神戸キャンパス   https://www.hyogo-u.ac.jp/facility/khlc/
※2025年4月以降は、神戸新キャンパス(新長田駅付近)に移転予定
» アクセス
[電車]
■ JR大阪駅→JR神戸駅 約23分(新快速)
■ JR姫路駅→JR神戸駅 約35分(新快速)
■ 新神戸駅→市営地下鉄三宮駅→徒歩→JR三ノ宮駅→JR神戸駅→徒歩 約8分
■ 市営地下鉄ハーバーランド駅→徒歩 約8分
■ 阪急・阪神高速神戸駅→徒歩 約13分

Q & A

Q1. 教育長でなくても入学は可能でしょうか。
本コースは教育長及び教育行政幹部職員の養成コースですので教育長でなくても入学は可能です。志願要件は、「現に地方教育行政の職に就いている者、または教育機関、官公庁、民間企業等で10年以上勤務し地方教育行政の職に就くことを希望する者」としています。コースには、教育長のほか、教育行政職員、校長・教頭、学校事務職員など様々な職の方々が在籍しています。
Q2. 授業はどのように受講するのですか。
学生の要望等を踏まえた時期・場所で受けることができる「フレックス&プレイスカリキュラム制度」を導入しており、教員が学生のもとに赴き行う「出張講義」、教員の授業を収録したDVDやそのネット配信でフレックスに学ぶことができる「VOD方式講義」、「Web会議システムによる研究指導」、学生が一堂に会する神戸キャンパスでの「集中演習」や「フィールドワーク」の組み合わせを基本として受講していただきます。また、これらとは別に、専門科目『教育政策導入領域』4科目の授業内容の一部にもなっている全国各地で開催する「教育行政トップリーダーセミナー」に参加いただくことになります。
Q3. 直接出向いて参加しなければならない授業にはどのようなものがありますか。
授業はハイフレックス型(オンラインと通学による対面授業を選択できる)により実施しますが、演習や実習等では神戸(神戸キャンパス)や各地において対面により実施することもあります。「教育行政トップリーダーセミナー」では、一般の参加者とともに開催地で受講いただきます。その他、選択する科目によっては現地の教育機関等を訪問し調査等を行う「フィールドワーク」を実施する場合があります。
Q4. 地元での受講方法は。
神戸での授業以外は、コース教員が学生の地元に赴き授業を行う「出張講義」と「VOD方式講義」、「Web会議システムによる研究指導」となり、地元で授業を受けていただくことになります。出張講義日程は教員と学生間で調整し ます。原則、授業は土日等の休日に実施します。なお、近隣に他の学生がいればその学生との合同授業となる場合があります。また、「VOD方式講義」は、自宅等で都合のよい時間に受講いただきます。