令和元年度からの教育課程における学びの可視化に関する研究―新カリの教育効果の検証― 理事・副学長 須田 康之

研究計画・方法

(1)学びの質の検証

 「教員による継続的な学生へのかかわりが学生の教員になりたいという意欲を高める」という仮説のもとに本調査をすすめ、どのようなかかわりが自立的な学習者を育て、高い資質を持つ教員を育成することにつながるのかを、質的調査ならびに量的調査から明らかにする。見通しとしては、今後展開されるであろう学習観・授業観の転換を図る教員養成カリキュラムの開発に本研究の知見を提供するとともに、学習者の学びを可視化しそれをもとに授業を構想できる教員の育成に寄与することになる。

(2)質的調査(4月~12月)

 学部1年生から4年生までの10名ずつ、計40名に対して聴き取り調査を行い、学年ごとに直面している課題を明らかにする。聴き取り調査に協力を得る40名の学生は、次のように選出する。学部生の入学定員は160名である。各学年で対象となる10名の学生は、教科教育系、幼年教育系に対して8対2の割合で割り当てる。そのうえで、入学時の成績、性別、これまでの成績を勘案し、調査協力候補者のリストを作成する。リストの上位から順番に面談を行い、了承が得られた学生を聴き取り調査の調査対象者とする。1年生から3年生については、次年度以降も継続して聴き取り調査を行なうため、事前に了解を得る。
 聴き取り調査の基本的問いは、「学生は、4年間の中でどのように学び、どのようにして教師という職業に就くことを選び取っているのか、あるいは、教師という職業に就くことを選び取らなかったのか」である。調査内容および調査の進め方については、随時、質的調査チーム(山中、別惣、石野)で協議しながら進める。
 聴き取り調査は学生一人あたり60分を予定している。1時間あたりの文字起こしの単価が12千円であるので、謝金等として480千円を計上した。

(3)量的調査(4月~12月)

 学業成績は大学が保有する貴重なデータである。大学にとって学業成績の分析をすることなしにカリキュラムの検討をすることはなし得ない。学生の4年間の学業成績を用い、パネルデータ分析を行ない、教員採用試験の受験の有無や合否を決定する要因は何かを探る。パネルデータ分析を開始するにあたり、データセットを作成することが必要になる。量的調査チーム(須田、清水)において、データセットの作成を7月末までに完了させ、8月以降分析に入る。分析ソフトとしてStata/MPを2台分購入するために、136千円を計上した。

(4)全体のまとめ(1月~3月)

 令和4年4月当初から実施してきた、学生への聴き取り調査ならびにパネルデータ分析から得られた結果を整理して報告書としてまとめる。加えて、それを踏まえた学生支援体制への提言を行なう。

(5)研究組織とデータの取り扱い

 研究体表者の須田が研究全体の総括・調整を行ない、質的調査については、山中、別惣、石野が分担して学部学生への聴き取り調査にあたる。量的調査については、須田、清水がデータセットを作成し分析を行う。
 聴き取り調査のデータならびに成績データの取り扱いについては、教育改善推進室が定める規定に則るとともに、個人データの管理には学務課の協力を得る。

成果発表会

 令和4年10月に教育改善推進室会議において、その時点での進捗状況を報告する。令和5年2月に、図書館ライブラリーホールにて本調査の成果をもとに、学外からパネリストを招き学内シンポジウムを開催する。
 学修成果の可視化については、第4期中期目標・中期計画の中期計画(6)にかかわるものである。評価指標は、「学年をコーホートとする経年変化と学生個人の学びの特徴を捉え、これを基に学生への助言や支援がなされていること」とあるため、この内容にかかわるシンポジウムを開催することになる。
 本研究の成果を、日本教育学会ならびに日本教育大学協会の機関誌に投稿する。

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