Society5.0時代を生きぬく子どもを育成する小学校カリキュラムデザイン―PBL(Problem Based Learning)をベースとした教科学習の創造― 兵庫教育大学附属小学校・教諭 末永 琢也

研究目的

(1) 研究目的

 現在,Society5.0時代に向けた新たな人材育成が求められている。それを踏まえ,学習指導要領では,これまでのコンテンツベースからコンピテンシーベースへの転換が求められている。つまり,今までの学校教育を問い直し,新たな学校教育を創造していくことが必要なのである。そこで,本研究では,Society5.0時代を生きぬく子どもを育成するためのカリキュラムをデザインする。その教科カリキュラムに焦点を絞り,問題基盤型学習(PBL:Problem Based Learning,以下,PBL)を土台にした各教科の授業を実践する。そして,年間を通した実践から,PBLやデザインしたカリキュラムの成果と課題を明らかにすることである。PBLをベースとした教科学習では,ICTの活用や教科横断型の単元開発などを取り入れていく。

(2) 学術的特色と予想される結果と意義

本研究の学術的特色は,次の2点である。
①PBLをベースとした各教科の具体的な授業を提案することができる。
②Society5.0時代に求められる子どもを育成するための教科カリキュラムを開発することができる。
予想される結果と意義は,次の2点である。
PBLの有効性を図ることができる。
 PBLをベースとした各教科の授業を行えば,子どもの資質・能力や学力は向上する。
子どもの実態や他の教育活動との相乗効果を生み出すカリキュラムをデザインすることができる。
 子どもの学びの文脈を捉え,修正を繰り返したカリキュラムを作成することができる。

(3) 研究の位置づけ

 各教科におけるコンピテンシーベースの授業研究が進められているが,授業事例としては少ないのが現状である。具体的な授業構成や方法が示されることが必要である。本研究では,コンピテンシーベースの授業としてPBLをベースとした教科授業を提案することができるところに特色がある。さらに,カリキュラムと合わせて提案することで現場の課題を解決する一助となる。

(経緯・背景)

 本校では,開校以来,「人間として生きぬく力」という教育目標を大切にしてきた。これは,現代社会を自分の力で生きぬいていけるような人間形成を目指したのである。ただ,この目標を設定した当時の社会は,ある程度の予測や見通しが立てられていた。しかし,現在は,科学技術の発展やコロナウィルスの蔓延を契機に,社会構造の大きな変化が起きるとともに,見通しの立たない不確実な時代へと突入していることは明らかである。このような現状を踏まえ,「経済的発展と社会的課題の解決を両立し,人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる社会」というSociety5.0の社会の構築が進められており,そのための人材育成が求められている。以上より,本校の教育目標である「人間として生きぬく力」を「Society5.0時代を生きぬく力」と捉え直し,新たな学校目標と学校教育を創造していくことが必要だと考えた。

 文部科学省は,Society5.0時代に求められる人材像や学びの在り方を次のように定義している。

①新たな社会を牽引する人材
 技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材とそれらの成果と社会課題をつなげ,プラットフォームをはじめとした新たなビジネスを創造する人材
②共通して求められる力
 知識・技能,思考力・判断力・表現力をベースとして,言葉や文化,時間や場所を超えながらも自己の主体性を軸にした学びに向かう一人ひとりの能力や人間性が問われる。
・文章や情報を正確に読み解き,対話する力
・科学的に思考・吟味し活用する力
・価値を見つけ生み出す感性と力,好奇心・探求力

 さらに,Society5.0における学校の姿として,個別最適型学習や異年齢・異学年での協働学習,地域の教育資源や社会関係資本を活用した学びなどが提案されている。
このような社会情勢や本校の教育目標と関連づけながら,本研究を進めていく。

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