メタ言語能力の活性化による国語科と英語科の相乗的学習プログラム開発【仮】 教科教育実践開発専攻 言語系教育コース[国語]・准教授 菅井 三実

研究目的

(1) 研究目的

 日本語(国語)と英語の異同を平明に説明することで国語科と英語科の風通しを良くし、日本語力と英語力を同時に高めることを目標に、日本語(国語)と英語に共通するメタ言語能力を高めるコンテンツを構築する。日本語(国語)と英語において、具体的な言語現象をピックアップし、どの現象にどのような指導法が有効なのかを検討し、実践授業の中で検証する。

(2) 学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 学習者の総合的な言語運用能力の向上を視野に置き、国語科と英語科の「合科」的な学習システムを具体的に構築しようとする試みであり、本研究の結果として、実践可能なコンテンツと指導を現場の先生方に提供することが可能になる。

(3) 国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 本研究課題でキーワードとして着目する「メタ言語能力」は、社会人となったときに日本語を運用するのに必要とされる力であると同時に、外国語の学習を促進すると言われてきた。本研究課題は、日本の中学校において、メタ言語能力活性化のための具体的なコンテンツと指導効果を明らかにする実践的な検証研究である。

(経緯・背景)

 本研究課題の背景として、①メタ言語能力が再評価されてきたという動向と、②その具体的なコンテンツが整理されたことの2点が挙げられる。

 まず、本研究でキーワードとして着目する「メタ言語能力」(Birdsong, 1989)とは「ことばを客体的に捉え自覚的にコントロールする力」であり、以前から英語教育の研究の中で知られていたが、小学校での英語教育の妥当性に関する議論の中で再び注目されるようになり、英語教育を導入するにあたっては、英語の運用能力を高めることと並行して、母語としての日本語力(国語力)を高める必要性が強く主張された。小学校英語に関連して再評価された「メタ言語能力」について、本研究課題では、中学校レベルで実践的な研究を立ち上げようとするものである。

 もう1つは、国語科と英語科の連携を図る具体的なコンテンツを整理して、申請者は、単著『英語を通して学ぶ日本語のツボ』(開拓社)を上梓しており、この内容から、現職教員である研究分担者との検討会を通して、授業実践で利用可能と思われるトピックを選定できるようになったことである。また、認知科学的な言語教育に関して、2015年に単著『人はことばをどう学ぶか―国語教師のための言語科学入門―』(くろしお出版)が刊行されたことから、方法論的にも準備が整ったことが本研究課題を立ち上げる契機となったものである。

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