聴覚障害児のインクルーシブ教育:合理的配慮としての手話活用の実践的検討 学校教育研究科 特別支援教育専攻・教授 鳥越 隆士

研究計画・方法

【平成27年度】

(1)本研究では,通常の小学校に在籍している聴覚障害児に対して,手話に関する以下の4つの項目に関して,具体的に実践プログラムを構築・実施しつつ,それらをできるだけ詳細に観察・記述し,エスノグラフィカルな視点から分析し,検証を行う。(括弧内は主要経費との関連を示す)
‐難聴学級在籍児童の手話へのニーズの評価と手話指導の在り方について 手話を第一言語とする成人ろう者(手話教師)が難聴学級に定期的に訪問し,手話の指導を行う。手話指導内容,方法に関しては,関係者と協議しながら進め,指導カリキュラムやシラバス,教材等についての検討を行う。特に欧米等でも手話指導カリキュラムが開発されているが,いずれも手話を第一言語とするろう児に対してのものである。本研究に参加する聴覚障害児の多くは,手話は第二言語であり,そのため新たな指導法,カリキュラムの開発等が必要となると考えられる。なお指導の一部についてはビデオ収録し,聴覚障害児の学習の様子についても,継続的に詳細に分析する。(手話指導大阪校:10回分;カリキュラムの検討旅費;消耗品;なお神戸校での手話指導については,日教弘による助成を当てる)
‐通常の学級での手話指導 聴覚障害児が参加する通常の学級を成人聴覚障害者が定期的に訪問し,手話の指導と手話を使用する環境を提供する。聴児への手話指導のあり方を検討するとともに,手話指導が聴児と聴覚障害児の社会的関係へ及ぼす影響を検討する。(手話による支援謝金)
‐通常の学級での手話による支援 聴覚障害児の参加する通常の学級での授業(主として,「社会」と「理科」)に手話による支援(手話通訳など)を実施し,その方途と効果を検証する。(手話による支援謝金)
‐学校全体としての手話への取組の可能性の検討 学校全体のイベント等での手話の活用を図る取り組みを実施し,その方途と効果を検証する。

(2)上述の実践プログラムは,実施する学校や学級の状況を十分に勘案し,柔軟に行うものとする。評価は主に参与観察による記録と関係者へのインタビューによる。質的に分析を行い,仮説の構成を試みる。

(3)年度末には,実施したプログラム内容について,関係者による中間的評価会を実施し,次年度の計画を再検討する。(会議費)

【平成28年度(予定)】

(1)平成27年度と同様に,以下の4つの観点からプログラムの構築,実施,それらをできるだけ詳細に観察・記述し,エスノグラフィカルな視点から分析し,検証を行う。
‐難聴学級在籍児童の手話へのニーズの評価と手話指導の在り方について 手話教師が難聴学級に定期的に訪問し手話の指導を行う。手話指導内容,方法に関しては,関係者と協議しながら進め,最終的には指導カリキュラムの構築を試みる。(手話指導大阪校:10回分,神戸校20回分;カリキュラムの検討旅費)。また外部専門家を招いて研究授業と授業検討会を実施し,提案される指導法やカリキュラムの深化をめざす。(専門的知識の提供謝金,旅費)
‐通常の学級での手話指導 聴覚障害児が参加する通常の学級を聴覚障害者が定期的に訪問し,手話の指導と手話を使用する環境を提供する。分析の視点は,平成27年度と同様である。(手話による支援謝金)
‐通常の学級での手話による支援 聴覚障害児の参加する通常の学級での授業(主として,「社会」と「理科」)に手話による支援(手話通訳など)を実施し,その方途と効果を検証する。(手話による支援謝金)
‐学校全体としての手話への取組の可能性の検討 学校全体のイベント等での手話の活用を図る取り組みを実施し,その方途と効果を検証する。

(2)上述の実践は,実施する学校や学級の状況を勘案し,柔軟に行うものとする。評価は主に参与観察による記録と関係者へのインタビューによる。質的に分析を行い,仮説の構成を試みる。

(3)大阪校と神戸校の実践を比較し,実践プログラムの普遍化,一般化をめざす。(会議費)

(4)成果を関連の学会,研究会,シンポジウム等で報告する。また開発された教材等は,自由に活用できるように整備する。

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