防災・減災に関する児童生徒のアクティブな思考・判断を促す社会科授業モデルの開発と実践 教育実践高度化専攻 授業実践開発コース ・ 准教授 山内 敏男

研究目的

(1)研究目的

 本研究の目的は、社会科におけるアクティブな思考・判断にもとづく、適切な意志決定や行動選択の育成までを視野に入れた小・中学校における防災・減災教育の授業モデルを開発、実践し、その効果を検証することにある。第一に小・中学校における防災・減災にかかわる教科書記述、研究の現状を分析する、第二に教科書分析をもとにした防災・減災に関する授業モデルを示す、第三に授業モデルをもとにした授業実践を行い、その成果と課題を明らかにすることである。そして、これらの研究成果を学会、学術論文等で発表し、構築された理論と実践の有効性を明らかにする。

(2)当該分野におけるこの研究(計画)の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 本研究の特色は、社会科の先行研究における防災・減災教育の特質と課題を明らかにした上で、児童生徒がアクティブに災害への備えを考えていくことができる能力を育成する授業モデルを開発し、実証的に研究する点で学術的特徴をもつ。具体的には、「災害への備えは多ければ多いほどよい」といった考えを所持しがちである児童生徒に費用対効果の視点から災害への備えのあり方を考えさせる学習、過去の災害から学び取れるものは何かについて抽出し、過去の被害から未来の災害を予想し防災の具体について考えさせる学習などが提案できることの意義は大きい。

(3)国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 災害に関する基礎的な知識を習得する授業、災害と防災への努力をしている人を扱い、どのように避難するかといったいわゆる避難のスキルを習得する授業は多いと考えられる。確かに重要であるこれらの学習も、それだけでは社会科の学習として不十分である。社会科学的な分析を踏まえた思考・判断がアクティブに行える授業を構想、実践することで、適応可能なことを理解し、減災の認識まで獲得できることを目指した授業の開発研究である。

(経緯・背景)

 現在までに社会科関連学会において提案されてきた防災・減災に関する研究の到達点を大別すると、次のような分類ができる。*

 以上の研究成果を踏まえると、第一に児童生徒が必ずしもアクティブに学習できている訳ではない。第二に防災の視点は強調されているものの、減災の視点に立った提案は稀少である。第三に歴史学習では、教訓を学ぶことにとどまることから、児童生徒の問題意識高揚がされにくいといった課題がある。そこで、防災・減災の具体について的確に思考・判断できる次のような授業を開発、実践することが必要であると考える。

*引用文献 三橋浩志「社会科教育における防災教育研究の動向」『社会科教育研究』119号,2013年,pp.100-110

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