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【プレスリリース】航空レーザー測量データから中世に造られた山城の地形と自然の尾根を見分ける手法を開発

航空レーザー測量のデータを使い、中世に造られた山城の地形と自然状態の尾根の地形を見分ける方法を開発しました。山地にある遺跡など過去に改変された地形を探索して改変量を評価したり、改変された斜面の崩壊リスクを推定したりする上で、本研究で提案した手法が役立つことが期待されます。

研究内容と成果

本研究では、広島県南部において、中世に造られた39か所の山城跡(※1)を抽出し、詳細な地形分析を行いました。また山城との比較のため、それぞれの山城の近隣に位置し、標高がほぼ等しく、地形改変を受けていない山頂部(以下、「自然尾根」)を39か所選定して、同様の分析を行いました。具体的には、航空レーザー測量データから作成した1メートルメッシュの数値標高モデル(DEM)(※2)、傾斜量図(※3)、等高線図と広島県による中世の山城に関する調査報告書に記載された縄張り図(※4)を比較しながら、山城を構成する平坦面・急崖(曲輪・切岸(※5))、(図1)を判読し、曲輪から外側に20メートルの範囲を地形改変領域として定義しました。自然尾根の場合も同様に、尾根から20メートルの範囲を分析対象領域としました。山城と自然尾根のそれぞれの領域について、傾斜、断面曲率(※6)、平面曲率(※7)の統計値を取得しました。傾斜の計算では1メートルメッシュの数値標高モデルを、曲率の計算では5メートルメッシュの数値標高モデルを使用しました。
上記の分析の結果、山城は自然尾根に比べて、傾斜の標準偏差と断面曲率の標準偏差(ばらつき)が大きい傾向がありました。そこで、傾斜量の標準偏差と断面曲率の標準偏差の二つの指標から、山城(改変地形)と非改変地形の判別を試みました。
解析によって得られた閾値に基づき、尾根地形をA(両指標がともに閾値より大きい)、B(両指標のいずれかが閾値より大きい)、C(両指標のいずれも閾値より小さい)の三つの区分に分類しました(図2)。その結果、対象の山城39か所のうち28か所(72%)がA区分に、自然尾根39か所のうち25か所(64%)がC区分に分類されました。一部の山城はC区分に分類されましたが、これらの山城の中には、戦の陣として一時的に利用された事例も含まれており、山城の利用状況の違いも地形指標の大小に影響したことが考えられます。さらに、傾斜の標準偏差と平面曲率の標準偏差を組み合わせて同様の分析を行ったところ、これら二つの指標が大きい山城では、地形が改変された領域内に崩壊跡地を含んでいるものが有意に多いという傾向があることが判明しました。

(図1)山城の傾斜量図と現地写真
左図は広島県東広島市の鏡山城の傾斜量図である。傾斜が急であるほど濃い色で示している。赤枠で示した範囲は分析対象領域であり、白い部分が平坦面である曲輪、黒い部分が急傾斜の斜面である切岸に対応する。矢印の地点の現地の状況を右の写真に示している。

(図2)山城と自然尾根の領域内における傾斜と断面曲率の標準偏差の分布
傾斜量の標準偏差の閾値は10度、断面曲率の標準偏差の閾値を5メートル/平方メートルに設定して、尾根地形を図に示す三つの区分に分類した。調査対象の山城39か所のうち28か所(72%)がA区分に分類されていることが分かる。

  • (※1)山城跡:日本各地の大名などが山を利用して構築した城の跡である。主に鎌倉時代から戦国時代(室町時代後期)にかけて築造された。主として防御を目的としているため、山頂部を切り開いて構築されることが多い。
  • (※2)数値標高モデル(DEM):一定の間隔を持ったメッシュによって地表の標高を表現した3次元データである。メッシュの間隔を小さくすることで、細かい地形を表現することができる。近年普及した航空レーザー測量データから1メートルメッシュの数値標高モデルを生成することが可能になり、本研究の分析にも活用されている。
  • (※3)傾斜量図:白から黒までの濃淡を使って、斜面の傾斜を地図で示したもの。傾斜の緩い地点は白く、急な地点は黒く表示されており、地形の判読に用いられる。
  • (※4)縄張り図:中世城郭の構造を示した地図であり、詳細な現地調査によって作成される。
  • (※5)曲輪(くるわ)・切岸(きりぎし):曲輪は原地形の切り取りや盛り土などによって作られた平坦な土地であり、城主の居所などの拠点として用いられていた。切岸は、曲輪の周囲に位置する急斜面であり、敵の侵入を防ぐための防御施設の一つであった。
  • (※6)断面曲率:曲率は地形の凹凸の程度を表す指標であり、断面曲率は、斜面の最大傾斜の方向における凹凸の程度を表している。斜面の傾斜方向の凹凸が激しい場合は断面曲率の絶対値が大きくなり、平滑な斜面の場合は小さくなる。山城の築造によって平坦面と急斜面が形成されると、斜面上に複数の傾斜の変換点が生じるため、断面曲率の標準偏差が増加すると考えられる。
  • (※7)平面曲率:平面曲率は、斜面を等高線に沿って水平方向に切った場合における凹凸の程度を表している。谷や尾根が多い場合には等高線の屈曲が多くなり、平面曲率の絶対値が大きくなる。逆に、平滑な斜面の場合は小さくなる。

論文情報

【タイトル】Evaluation of medieval land transformation for the construction of hilltop castles based on topographic analysis of LiDAR DEMs(LiDAR DEMの地形解析に基づく中世山城の築造による地形改変の評価)
【著者】R.Terui, T.Hattanji, T.Kajita, T.Ogura, and M.Inomata
【掲載誌】Physical Geography
【掲載日】2026年3月13日
【DOI】https://doi.org/10.1080/02723646.2026.2643590

本学研究者

小倉 拓郎(社会系教科マネジメントコース 准教授)

研究内容の詳細

航空レーザー測量データから中世に造られた山城の地形と自然の尾根を見分ける手法を開発(PDF形式:1.2MB)

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