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【プレスリリース】自閉スペクトラム症成人の生活機能を改善 ―社会認知スキルトレーニング日本版の開発―

概要

本学大学院臨床心理学コース大塚貞男准教授(研究当時:京都大学大学院医学研究科精神医学教室特定助教)、京都大学大学院医学研究科精神医学教室の村井俊哉教授らの研究グループは、米国で統合失調症向けに開発された社会認知スキルトレーニング(SCST)(※1)の日本版治療プログラムを作成し、統合失調症や自閉スペクトラム症(ASD)をもつ成人を対象にランダム化比較試験(※2)を実施しました。社会認知とは、他者の感情や意図を理解し、人との関わりに役立てる能力です。臨床試験の結果、統合失調症とASDの両方において表情から感情を読み取る能力の改善が示されました。
また、本研究ではSCSTをASD成人に初めて応用し、表情の読み取りに加えて、他者の心を推測する能力である「心の理論」の改善傾向と、日常生活や社会生活に関わる全般的機能(※3)の改善も認められました。
本成果は、社会認知への心理学的支援がASDをもつ成人の生活機能の向上につながる可能性を初めて示したものです。今後、さまざまな精神疾患に共通する社会認知の困難に対する疾患横断的な治療プログラムと、各疾患や個人の特性に応じた個別化支援を組み合わせた統合的な治療法の開発が期待されます。

社会認知スキルトレーニングのイメージ図:他者の感情や意図を理解するための社会認知スキルを練習し(左側)、社会生活場面で活用することで(右側)、生活機能や生活の質の向上を目指します。
イラスト作成:大塚貞男、OpenAI ChatGPT(GPT-5、画像生成機能)を用いて作成
  • (※1)社会認知スキルトレーニング(Social Cognitive Skills Training:SCST):社会認知を改善することを目的とした心理学的治療プログラム。米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らによって開発され、統合失調症患者の表情から感情を読み取る能力などを改善する効果が確認されている。
  • (※2)ランダム化比較試験:ある治療を受ける群と受けない群などに参加者を無作為に割り付け、各群の変化を比較する研究デザイン。無作為に分けることにより、参加者の特性や参加姿勢といった結果に影響しうる要因の偏りを小さくし、治療そのものの効果をできるだけ厳密に検証できる。臨床研究における重要で信頼性の高い研究手法。
  • (※3)全般的機能:心理的安定、人との関わり、仕事や学業などを含む生活全般において、その人がどの程度うまく機能しているか、どの程度支障なく生活を送れているかを評価する指標。

論文情報

【タイトル】Different effects of social cognitive skills training in schizophrenia and autism spectrum disorder: A rater-blinded, multicenter, randomized controlled trial(統合失調症と自閉スペクトラム症における社会認知スキルトレーニングの異なる効果:評価者盲検・多施設ランダム化比較試験)
【著者】大塚 貞男、大江 さつき、山田 純栄、雲井 春佳、諏訪部 亮一、岩根 達郎、鶴身 孝介、村井 俊哉
【掲載誌】Psychiatry and Clinical Neurosciences
【掲載日】2026年7月22日
【DOI】https://doi.org/10.1111/pcn.70106

本学研究者

大塚 貞男(臨床心理学コース 准教授)

本学研究者からのコメント

私は、精神科の医療機関で臨床心理士として勤務していた頃、心理学的支援がASDをもつ成人の生活機能や生活の質の向上に役立つというエビデンスが乏しいことに問題意識をもち、2014年に京都大学大学院博士課程に進学しました。博士課程では、ASDにおける社会認知と生活機能との密接な関係を明らかにし、その成果をもとにSCSTのASDをもつ成人への応用を構想して、この臨床試験を計画しました。そして、博士課程入学から10年以上を経て、ようやくこの研究成果を公表することができました。今後も、ASDをもつ成人への効果的な支援方法の確立に向けて、研究を前進させていきたいと思います。

研究内容の詳細

自閉スペクトラム症成人の生活機能を改善 ―社会認知スキルトレーニング日本版の開発―(PDF形式:1.0MB)

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