小学・中学・高等学校における児童生徒の積極的な自学自習の言語学習と効果のフィードバックを行うための小型音声翻訳端末の活用法 学校教育研究科教育実践高度化専攻 グローバル化推進教育リーダーコース・准教授 川﨑 由花

研究目的

(1)研究目的

 本研究は小学校・中学校・高等学校の児童生徒を対象に小型音声翻訳端末を自学自習に活用することで、児童生徒の会話を中心とする積極的な言語学習に繋げるとともに、翻訳ソフト等を用いた従来の手法よりも学習効果が高まることを検証することを目的とする。

(2)本研究の学術的な特色・独創的な点

 従来よりタブレット端末等に翻訳装置を組み込み言語学習に活用する事例は報告されているが、これらは教師が中心となり活用する手法が多く、また活用に際しての機器の準備等も簡便なものであるとは言いがたい。本研究では取り扱いや携帯性に優れた小型音声翻訳端末を活用することで、児童生徒が日常的に言語学習を自学自習形式で行うための環境を与えることとする。その上で、小型音声翻訳端末の特性である「学習者の発した任意の文章を認識し、希望する言語に変換して発音する」を活用することで、自学自習においても簡便に「学習者の学習目的とする言語における発音の正確さを確認する」「定型文ではなく学習者自身が考えた文章を用いた言語学習」が可能になると考える。特に児童生徒の発音の正確さは人間でなくAIが判定を行うため、語学能力に堪能な指導者がいなくても児童生徒は手本となる発音を聞きながら繰り返し発音の練習を行うなど、自由度の高い自学自習を行うことが可能となる。

予想される結果と意義

 小型音声翻訳端末は使用が簡便なことから、その活用回数や時間は従来手法よりも増えるものであることが予想される。また、児童生徒の発した言葉と翻訳結果はすべて記録として残るため、児童生徒の学年別による言語学習の内容比較調査を行うことで、学年別に児童生徒が必要とする言語学習内容が得られるものと推測される。

(3)関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 平成21年3月に文部科学省から発行された「教育の情報化に関する手引き」による教育の情報化
① 教科指導におけるICT活用 ②情報教育 ③校務の情報化
のうち本研究は『①教科指導におけるICT活用』に該当し、更に細分化した場合、
 1)学習指導の準備と評価のための教員によるICT活用
 2)授業での教員によるICT活用
 3)児童生徒によるICT活用
のうち、『3)児童生徒によるICT活用』に該当する。

(経緯・背景)

 「教科指導におけるICT活用」は、独立行政法人メディア教育開発センターが実施した「教育の情報化に資する研究(ICTを活用した指導の効果の調査)」(2007年)によりその効果が明らかになっている。また、同調査においてICTを活用して授業を行った教員の98%が「関心・意欲・態度」の観点を中心とする効果を認めている。また教師が教科指導において効果的にICTを活用する手法は高橋・堀田(小学校教員が効果的と考える普通教室でのICT活用の特徴,日本教育工学会論文誌 Vol.32,pp.117-120,2008)など様々な先行研究がなされている。そこで本研究では、2020年度より小学3年生から英語教育が導入される事に合わせて「外国語指導におけるICT活用」に着目した。既に研究事例が多数報告されているタブレットおよびスマートフォンの活用とは異なり、近年急速に普及を始めた小型音声翻訳端末を活用して「学習に対する児童生徒の興味・関心を高める」「児童生徒一人一人に課題を明確につかませる」「学習内容をまとめる際に児童生徒の知識の定着を図る」ことを目的とする。更に本研究は生徒の自学自習における活用を視野に入れるため、対象を小学校の児童に限定することなく、中学校・高等学校の生徒も対象とする。「生徒の自学自習における活用」に主眼を置き、具体的な研究実践内容は、児童生徒が自学自習のために、小型音声翻訳端末に外国語の単語や基本的な単文を話しかけ、端末に正しく認識されて日本語に変換されるか確認を行う。また、日本語での単語や基本的な単文を端末で外国語に翻訳し発音を確認する事で、自らの発音改善を試みる。機械を相手に発音確認を行うため、人間を相手にする場合の意思のくみ取りやゼスチャーによる理解等が介在しないため、音声言語のみによる意思伝達の上達を計る。学習効果は翻訳端末が言語を正しく変換した割合で確認を行い、学習を繰り返した後、最終的にALTなどを交えて学習効果を確認する。

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