令和8年度大学院学校教育研究科(フレックス及び臨床心理学コース(昼間))入学式式辞
桜の花が春の訪れを知らせる今日の良き日に、ご来賓のご臨席を賜り、国立大学法人 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 令和8年度入学式を、ここ神戸キャンパスにて挙行できますこと、我々、教職員一同、大きな喜びをかみしめております。
令和8年度入学生の皆さま、本日はご入学、誠におめでとうございます。大学を代表致しまして、皆さまを心より歓迎致します。皆さまは、それぞれに大学院での学びに対して、熱い思いと明確な目標をもってご入学されたと思います。私ども教職員一同、そのような皆さまの思いや目標の実現に向けて、精一杯、サポートさせて頂く所存です。特に、皆さまの多くは、お仕事をされながら、大学院での研究生活を送られることになります。どうか、ご健康にご留意の上、ぜひとも、がんばって頂ければと存じます。
さて、私は、よく「学び」を「旅」に例えています。学校での授業は、教師が子供に寄り添い、一緒に山道を登っていく営みのように感じることがあります。時には危険を未然に回避してルートを指し示すこともあれば、あえて冒険に挑戦させ、その様子を遠くから見守ることもあります。道は1本道ではなく、多様な子供一人ひとりが、より豊かに「学び」という「旅」を体験できるよう、、常に考え、関わり続けなければなりません。この意味において教師には、現場で泥だらけになっても「子供とともに歩もうとする情熱」が求められます。このことはおそらく、臨床心理相談においてクライアントに寄り添う、カウンセラーも同じだと思います。
一方、「旅」には「地図」が必要です。地図なしに闇雲に歩いても、目的地には到達できません。地図なしにガイドしようとしても、自分がすでに歩いたことのある道しか案内することはできず、過去の事例にとらわれ続けます。しかし、地図があれば、今、自分がどこにいるのか、どこに向かうべきなのかがわかります。引き返すことも、新しいルートにチャレンジすることもできます。
実は、教育の実践を支え、方向づける「地図」は、新たな教育政策や教育改革の動向、子供の発達や認知の特性、各教科の背景学問と教材との関わり、ICTやデータを活用した新しい教育方法など、専門的な知識基盤によって描かれています。臨床心理相談でいえば、心の発達や認知・行動・情緒のメカニズム、心理アセスメントや心理療法の理論と技法、法制度や医療・福祉・教育との連携などといった知識基盤によって、実践の「地図」は描かれているのです。
そして、この「地図」は、時代の変化とともに、それ自体が大きく書き換わっていきます。特に、予測不能とまでいわれるほど変化の激しい現在の社会においては、実践を支える「地図」を常に更新し続けていくことが何より大切です。
皆さまの大学院での学修は、まず、皆さまの中にある「地図」を最新版へとアップデートすることから始まります。その上で、皆さまは、自らの問題意識のもとで、そのエリアの「地図」を冷静に描きなおし、他の実践者がその道をうまく進めるように、知見やリソースを整理したり、先導的な事例を創出したりします。これが大学院での研究の役割となります。
本学の大学院は、実践の知を求める研究志向の強い大学院です。理論と実践の往還・融合を図ることで、教師あるいは心理職としての専門性の向上を図っています。
皆さまには、本学でぜひ、子供やクライアントに「寄り添う情熱」と、「冷静に地図を描きなおし、新たな道を開拓」できる専門性を身につけて頂きたいと思います。そうすることで、皆さまが大学院を修了された後、確かな理論に裏付けられた教育活動あるいは臨床心理相談と、エビデンスに基づく効果検証や実践の改善などに取り組むことができるようになります。
ただし、これには一つだけ重要な条件があります。それは、大学院で皆さまが「受け身」ではなく、「能動的」に学修や研究に取り組まなければならないという点です。本学には、皆さまが自ら学び研究するために必要な学修環境やコミュニティがしっかりと整備されています。しかし、いずれも、皆さまが主体的に動き、関わろうとしなければ、何も始まりません。また、2年間あるいは3年間という時間は決して長いものではありません。限られた時間の中で、新たな「地図」を描きなおすために、様々な理論やアイディアを自ら「取り入れ」、「考え」、「ぶつけて」、「生み出す」。そんな知の冒険に積極的に挑戦していって頂きたいと思います。
本学大学院での学びが皆さまの人生のさらなるステップアップにつながるとともに、皆さまが生み出されたご研究の成果が、未来の子供たちやクライアントの「旅」を支える確かな光となりますことを祈念致しまして、私からのお祝いの言葉にしたいと思います。
令和8年4月5日 国立大学法人兵庫教育大学学長 森山 潤