令和8年度大学院連合学校教育学研究科入学式式辞

 桜の花が春の訪れを知らせる今日の良き日に、国立大学法人 兵庫教育大学大学院 連合学校教育学研究科 令和8年度入学式を挙行できますこと、我々、教職員一同、大きな喜びをかみしめております。

 令和8年度入学生の皆さま、ご入学、誠におめでとうございます。構成6大学を代表致しまして、皆さまを心より歓迎致します。

 皆さまは、これまでにも、学部、大学院修士課程あるいは教職大学院において、学修と研究を積み上げてこられました。また、皆さまの多くが、その後に、学校現場や臨床心理相談等の実践のフィールドにおいて、主体的に教育・研究活動に取り組まれてきたと思います。

 その歩みを経て、本日、こうして博士課程という高度な学術研究の場に立たれたことに、深い敬意を表します。

 一方、皆さまがこの先、進まれる研究の道は、決して平坦なものではなく、さらなる挑戦に満ちてあふれています。

 独創性のあるリサーチクエスチョンを考え、調査や実験などを行い、分析して知見をまとめ、論文を執筆し、さらに学会誌に投稿し、そして査読をクリアしなければなりません。本学の博士課程の学位授与に求める条件は、このプロセスを最低2回以上、繰り返して、査読付き学術論文を2編以上、書かなければなりません。その上で、研究全体を再構成し、学位論文としてまとめていかなければなりません。これは単に刊行された2本の論文をつなげる作業ではなく、全体としてのまとまり、ストーリーの展開が極めて重要となります。

 私個人の研究指導の経験でいえば、1編目は比較的、なんとかなりやすいという印象をもっています。しかし、2編目に取り組む際は、1編目から続く学位論文としてのストーリーと、独立した1本の論文としての新規性を両立しなければならず、苦労された院生さんが多かったように記憶しています。

 やはり、大切なのは、最初に立てる学位論文全体をカバーするリサーチクエスチョンです。このリサーチクエスチョンをブレークダウンし、いくつかの下位の課題に分割した後、それらの課題がそれぞれに論文となるよう、綿密に計画を立てることが大変、重要だと感じています。こうしたご苦労のすえ、学位論文はやっと完成するのです。

 では、なぜ、皆さまは、そこまで苦労して、学位論文を書かなければならないのでしょうか?

 そもそも研究論文を書くという行為は、学術と社会の発展に資する新たな「知識の創造」に参画するという営みです

 今でこそ教科書に載るような誰もが知っている知識であっても、その源流には、無数の研究者が積み重ねた研究の軌跡があります。

 研究とは、論文を書くこと自体が目的ではありません。論文というメディアを通して、最前線の研究者や実践者に成果を届け、彼らの新たな研究や実践を支えることこそが、本来の目的なのです。言い換えれば、皆さまは、研究によって、「知識の創造」を通して社会に貢献する人材となるのです。

 したがって、博士号の取得は、あくまで、そのマイルストーンの一つだと考える必要があります。皆さまは、博士号の取得を最終目標にしてはいけません。皆さまの最終目標は、博士号を取得した後、それぞれのお立場で、研究を通して、学校教育や臨床心理相談などの実践のフィールドの改善と創造に貢献することにほかなりません。

 その時、博士号は、皆さまがそのような取り組みを進めるにあたり、十分な見識と能力を有することを証明するものとなります。

 皆さまにはぜひ、この博士課程での学修と研究を通して、3年後には、一人でしっかりと研究ができる力、論文がかける力、査読をクリアできる力を、身に付けていって頂きたいと思います。

 こういう観点で、皆さまの博士課程での3年間は、「研究のために学ぶ」ことと、「学ぶために研究する」ことを往還・融合させる絶好の機会であると、捉えて頂ければと思います。

 皆さまはこれから、主指導教員の先生方とともに、学位取得に向けたご研究を進められることになります。博士課程をご担当される先生方は、全国の教員養成系大学・学部の中でも一握りの卓越した研究指導力を持った先生方です。このような素晴らしい先生方のもとでの研究活動やゼミの仲間との関わりは、生涯の宝物となります。

 一方で、これは言うまでもありませんが、研究業績を急ぐばかりに、研究倫理に抵触するような行為に及んではいけません。研究倫理に反する行為からは、得られるものは何一つない一方で、これまで築いてきたこと全てを失う危険性があります。研究倫理については、改めて研究科長や研究主幹からお話があると思いますので、しっかりと学び、襟を正して頂ければと思います。

 それでは、本学博士課程でのご研究が、皆さまの人生のさらなるステップアップにつながるとともに、その研究のご成果が、学術と社会の発展に資するものとなることを祈念致しまして、私からのお祝いの言葉にしたいと思います。

令和8年4月5日 国立大学法人兵庫教育大学学長 森山 潤

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