令和6年度大学院学校教育研究科(昼間)学位記授与式式辞
令和6年度、兵庫教育大学大学院学校教育研究科、修士課程、専門職学位課程、昼間クラスの修了生150名の皆さま、おめでとうございます。また、ダブルディグリープログラムの2名の方、教員研修留学生の5名の方、修了おめでとうございます。
2年間あるいは3年間、ダブルディグリープログラムの方は1年半、教員研修留学生の方は神戸大学を含めて1年半年、本当にご苦労さまでした。それぞれ、いろいろな学びをされました。また、苦しいこと、楽しいことがあったと思います。まずは修了に当たりまして、まだまだこれから長い人生、この2年ないし3年、あるいは1年半年の経験をぜひ生かしていくというプラス思考を持っていただきたいと思います。
皆さまは修了後、教師として学校現場に戻られる方、新しく教職に就かれる方、さらには心理専門職に戻られる方がおられます。教職も心理専門職も高度専門職です。高度な専門職には学び続けることが必須です。学び続けないと高度専門職たり得ません。これからも、皆さまは高度専門職として学び続けていただかなければならないわけですが、3点ほど、その学びの在り方について私の考えを述べてみます。
一つ目は、高度専門職の学びは、自らの学びを自らマネジメントするということです。つまり、自分の学びは自分でつくり、選び、遂行し、かつその評価を行い、成果や課題を確認して、次にまた学びをつくっていくことです。逆の言い方をすると、自らマネジメントしていない学びとはどういう状態かといいますと、やらされ感があるとか、嫌々やっているとか、それに付随して楽しくないとか感じている状態です。
お仕事をされているとお分かりになると思いますが、自分が選べる学びだけではありません。中には与えられるもの、強制されるもの、しかも忙しい中でやらなければならないものがあるのです。しかし、それをいかに自分のものにできるかどうかが、経験の長い方はお分かりのように、一つのポイントになります。私が知る限り、優秀と評判の高い先生はこれができているように思います。
昨年度から、研修受講履歴の記録作成が全ての教師に義務づけられております。これは、高度専門職として自らの学びをマネジメントするためのツールですので、ぜひ生かしてください。ゆめゆめ義務だから仕方なく記録しているということにはならないようにしてください。私はそういう思いでこの制度づくりに関わりましたので、よろしくお願いします。
二つ目は、当然のことですが、絶えず新しい内容や方法を学んでいただきたいということです。ご存じのように非常に変化が激しい。例えば1人1台の端末を有効活用した、EdTechやデータサイエンスをすべての教師が修得することが求められています。探究型の学びをするSTEAM教育もいわれています。インクルーシブ教育や特別支援教育も全教員に必須だとされています。生成AIも、急激な進歩と普及を見せており、学校教育でいかに有効活用するかが大きな課題になっています。活用されている皆さんも多いと思いますが、すべての教師がこれに対応することが求められます。
本学は教員研修プログラムを用意しています。多彩なプログラムがあり、新しい内容がたくさん含まれております。現場に帰られてからもぜひ活用してください。
最後の三つ目は、探究型の学びをしてくださいということです。ご存じのように、学習観の転換がいわれています。子どもたちが主体的に他の子どもたちと学び合う協働的な学びです。そこでは探究的な学びが行われます。探究的な学びが学校教育の中心になってきています。
子どもの学びと教師の学びは相似形であるということで、子どもの学びがそのように変わるのであれば、教師の学びも同じように変わらなければならない。つまり、先生方も一人一人が、主体性を持って学び合う探究型の学びをすべきということです。文部科学省がそういう方針を打ち出していますし、つくばの独立行政法人教職員支援機構の研修もそういう方向に転換しています。
校内研修は本来そういうものであるべきです。大学院で探究型の学びを経験された方も多いと思います。教育委員会の提供する研修でも、探究型のものが主流になるといわれています。探究型の研修への転換が起こっていますので、大学院での経験も生かして、ぜひ探究型の学びづくりに積極的に取り組んでいただきたい。学校や教育委員会で探究型の研修を創ることは、大学院で学んだ方に期待される役割といえます。
例えば、学校経営コースの方が、大学院で学んだ成果を基に本学の附属学校で働き方改革の研修を行い、これが問題解決型の研修であって非常に好評だったと聞いております。そういうことをぜひやっていただきたいと思います。
教員研修留学生の皆さま、本学近辺の地域や学校でたくさん活動していただきまして、ありがとうございました。これからお国に帰られると思いますが、ぜひ日本での経験を母国で生かしてください。帰国後も兵庫教育大学をよろしくお願いします。お付き合いを継続を強く望んでおります。
皆さまのこれからの人生が、本学の学びを糧に充実したものになることを祈念いたしまして、私の式辞といたします。
令和7年3月21日 国立大学法人兵庫教育大学学長 加治佐哲也