私は30歳の頃に「地域×教育」をキーワードに生きていくことを決めましたが、その後、人との出会いを通じて自分も「教育長になりたい」と強く思った出来事がありました。ただ、その時の自分は経験も実力も足りないと感じ、まずは全国の教育長に話を聞こうと決め、オンラインで100人にインタビューしました。やるなら徹底的にという思いでした。
その中で、多くの教育長から「教育政策リーダーコースで学ぶといい」と勧められました。さらに、先輩受講生や「この人から学びたい」と心から思える当時のコース教員との出会いが決め手になり、入学を決意しました。
まずは、講師の方々のレベルの高さです。1年目の出前授業では、各教育分野の第一人者の先生方がマンツーマンに近い形で指導してくださいました。膝を突き合わせて対話するような時間で、知識以上に「考え方そのもの」を問われました。自分の思考の癖や前提を揺さぶられるような感覚でした。
次に大きかったのは、大学院での学びと実務を行き来できたことです。教育次長職にあって教育長の近くで働いており、大学院で学んだ理論をすぐ現場で実践し、現場での疑問を大学院に持ち帰るという循環が生まれました。理論と実践が相互に作用し、学びが深まっていきました。
また、同期入学者や教育行政トップリーダーセミナーで出会った人たちの存在も本当に大きかったです。現役教育長、教育委員会職員、民間出身者など、多様な仲間と安全安心な場で対話する中で、自分の価値観が揺さぶられました。特に現役教育長と一緒に学べる機会を多く得られたことは貴重で、教育長の視点の高さや広さ、どれぐらい未来を見ているか、覚悟といったものを聞き取ることができました。日常の関係性から離れたところで対話する中で「越境的な学び」の場だからこそ、アンラーニングが進んだのだと思います。
フィールドワークとして出向いたある市で研究授業の様子も見せてもらいました。生き生きと語り合う教員の姿がとても印象的でしたが、特に心に残ったのは教育長のリーダーシップです。授業から子供一人ひとりの変化や教員の試行錯誤を丁寧に見とり、それを言葉で教員に返していく姿が本当に素晴かった。その言葉に教員の表情が輝いていきました。
また、その市では、授業改善のためのモデル校を作らず、教育委員会の提案に対して手を挙げた教員を中心に取り組んでいました。教育委員会はその支援のために新たに雇った人を送るなどし、教育委員会が伴走者として学校を支える体制が整えられていました。市全体の学びがアップデートしていく様子を実感することができました。
私は教育長を志して入学したので、この「教育長としての視座で考えられているか」という問いかけはありがたいものでした。私は日常の業務でも教育長に「今の判断の意図は何か」「教育長としてどう考えたのか」と問い続けており、大学院での学びと実務が強くつながったように思います。
その中で深めた問いが二つあります。一つは、「教育長としての自分の強みは何か」ということです。学校現場出身ではない自分が、どのような専門性を発揮して組織を導くのか。もう一つは、「学校との距離感をどうつくるか」。組織管理と学校の裁量のバランスをどう取るのか。教育長のスタンスを観察し、大学院で学びながら、自分ならどうするかを考え続けました。こうした問いを中心においた学びは、専門的な知識を身に付ける時間という以上に「自分の在り方」を深く見つめ直す時間であったと思います。
もし、ご縁がある自治体で教育長をやらせていただく機会を得ることができれば、そこで本コースの学びを発揮していきたいと思います。特に人口減少地域や過疎地域、離島中山間地域に住んでいる人が、将来に対して希望を見出せるような教育政策を進めていきたいです。
インタビュー実施:2026年2月(オンライン)