私はこれまで生涯学習や社会教育行政を中心に教育行政に携わってきました。学び続けることの大切さは、職務を通じて常に感じてきたところです。そして、教育長という立場になったとき、「自治体で唯一の教育長として、どのように教育行政を推進すべきか」という問いが強く湧き上がりました。AI や ICT の進展など、教育を取り巻く環境は大きく変化しています。そうした中で、これまでの経験だけではなく、大学で体系的に学び直し、俯瞰的な視点を持つ必要があると感じました。兵庫教育大学が行う「教育行政トップリーダーセミナー」に参加し、そこで「教育政策リーダーコース」を知り、このコースなら自分の課題意識に応えられると思い、挑戦を決めました。
想像以上に学習量が多く、仕事との両立は簡単ではありません。基本的に私は早寝早起きの人間なのですが、コースに入ってからは少しばかり起きる時間を早めて学習に充てています。土日も地域行事は多いのですが、空いている半日だったり行事のない土日だったりを使っています。また、自分のtodoリストを手帳の中にしたため、計画的に学習を進めています。
学びを進める中で、これまでの実践を理論的に整理し直す機会が得られました。また、コースの学びでは自自治体の実態について扱うことも多いですが、実態を扱う視点が提供されるので、改めて発見できることもあります。
また、教育法規の授業では、学校管理規則を題材に学んだのですが、これをきっかけに大崎町の学校管理規則を見直し、教育委員会定例会を経て実際に改正しました。学びが即実践に結びつく、教育長という立場だからこそ得られる学びの醍醐味だと思いました。
また、授業でつながった講師の方に、その後、町の英語教育についての助言や町内教員への指導をいただく機会を得ました。助言をもとに英語教育の施策の充実にも取り組みました。予算を確保するために町長、副町長にスピード感と情熱をもって掛け合い、施策を実行に移すことができました。自ら有識者と結びつくような行動を起こすことはこれまでの自分にはなかったことでした。こうした出会いを通じて行動を起こせたことも大きな成果だと感じています。
やはり都市部まででかけるとなると時間的・経済的負担は大きいです。そこへこのコースの出張講義は講師の方々が来てくださるので、大変学びやすいです。最近はオンラインで様々な学びが提供されてはいますが、やはり対面だからこそ、表情や声のニュアンス、休憩時間の雑談など、人間的な交流が生まれ、オンラインに替えられない価値があります。
また、コースの学修の一環として、フィールドワークで先進自治体を訪ねることも非常に有意義でした。百聞は一見にしかずで、現場を見て学ぶことで、自分の自治体に取り入れられる工夫が見えてきます。大学院生という立場があることで、自治体側も気軽に快く受け入れてくださる点も大きいと感じました。
私は教育委員会職員や首長、副町長に向けて「教育長便り」を定期的に発信しています。コースでの学びや気づきを共有すると、職員からも「こんな学びがあったのですね」と反応があります。教育長が学び続ける姿を見せることで、組織全体に良い影響が広がると感じています。校長や教職員にとっても大きなメッセージになるでしょう。「子どもの学びは教師の学びの相似形」と言われますが、それに似ているかもしれません。
大学院1年の12名の仲間とは LINE グループで出張講義の様子を共有したり、課題の締切を確認し合ったり、互いの自治体の情報を交換したりしています。全国に仲間がいるというのは大きな強みで、各地で行われる情報が提供されるのもありがたいですし、フィールドワークとして訪ねる場合にも心強い存在です。
入学前には、講義形態や移動の負担、学友の顔ぶれなど不安もありましたが、今では多様な仲間と学び合える環境が大きな財産になっています。学び直しを通じて得た視点やネットワークは、教育行政を進める上で欠かせないものになりました。
インタビュー実施:2025年12月(オンライン)