本研究の目的は、教職実践演習に関して、学生にどのような学びや教育効果があったのか、また授業担当教員は、この授業を通して成果と課題をどのように認識したのかを明らかにすることである。あわせて,教職実践演習を含めた4年間の学生の学びの成果を教師に求められる資質能力の到達度という観点から調べ、これまで履修してきた大学の授業との繋がりと効果を明らかにし, 授業実践モデルを提示するとともに, 今後のカリキュラム改善の一助とすることである。
教職実践演習は、教職課程における授業科目の履修や教職課程外での様々な活動を通じて得た知識や技能が,教員として必要な実践的資質能力として有機的に統合され,最終的に形成されているかを確認するものであり, 「学びの軌跡の集大成」として位置付けられる。本学での授業内容は, 事例研究と模擬授業, 履修カルテに基づく教職指導(まとめ) から構成される。具体的な目的は次の3点である。
これらの実践を通した基礎研究の積み上げによって,事例研究と模擬授業の意義を考察し,可視化することで, 授業実践モデルを提示でき,FD体制の構築につながる点で意義深い。
平成21年4月に「教育職員免許法施行規則」の一部が改正され,教職実践演習の導入が決定された。これに先立って,文部科学省より, 実施にあたっての留意点等が示され,教職実践演習では,教員として求められる4つの事項(①使命感や責任感, 教育的愛情等に関する事項,②社会性や対人関係能力に関する事項,③幼児児童生徒理解や学級経営等に関する事項,④ 教科・保育内容等の指導力に関する事項) を含めることが適当であること, また,授業内容例として,役割演技, 事例研究,模擬授業等があげられている。しかし,具体的な方法や内容等, 詳細は明らかではなく,実施にあたっては模索状況であり,困難であることが予想される。
本学で,,20年度実施のカリキュラムより教職実践演習を新設・必修化し,他大学より先行実施することとなった。本研究ではその利点を生かし,実施過程や実施状況の把握,成果と課題の検証,授業内容の改善を一体的に行う体制の整備を行う。教職実践演習の導入が法制化されて以来,各大学で準備作業が進められているので,成果と課題を早期にまとめ,他大学に情報発信することは本学の責務である。また,授業実践モデルの提示及びFD体制の構築は急務であり,本研究はそれに先駆的に取り組むものである。