中学生の「乳幼児とのふれあい体験」における家族機能の理解と育児力養成に関する研究 生活・情報・健康系教育コース 助教 永田 夏来

研究目的

(1)研究目的(何をどこまで明らかにしようとするのか)

 「乳幼児とのふれあい体験」等によって育児力がどのように育成されるかの測定と評価が本研究の主な目的となる。調査票による事前、中間、事後の育児力の測定、ワークシートなどを用いた経過の観察、「乳幼児とのふれあい体験」における動画撮影などを行い、実践と学習の効果を複合的な把握を行う。また、育児力を身に付けることと、保護者や乳幼児が安心して「ふれあい体験」に協力できる環境整備も合わせて行う。

(2)当該分野におけるこの研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 本研究の独創性は「乳幼児とのふれあい体験」等を家庭科教育の一環として位置付け、教科としての学習効果(具体的には、問題発見や問題解決などの姿勢)と育児力の育成の関連について検討することを視野に入れている点にある。また「乳幼児とのふれあい体験」で用いるおもちゃや椅子などを新たに準備し、それらの特徴や使い方について中学生が事前に考察するという点も特徴がある。育児力が伸びるほど、生活の中で問題を発見して解決するという家庭科の学習効果も深まるものと予想される。

(3)国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

新学習指導要領における「ふれあい学習強化」の方針に基づき類似の実践が多く行われている。本研究は教科教育と施設連携の両方に立脚している点に特徴があり、新たな実践の例として事例の蓄積に寄与できるものとみられる。

(経緯・背景)

 申請者は家庭科教育に関する研究の一環として、全日本中学校技術・家庭科研究会が毎年発行する機関誌『理論と実践』の実践論文のアーカイブ研究を行っている(村田・永田・山本の共著論文として2016年に家庭科教育学会に投稿し、受理された)。その研究過程及びディスカッションにおいて気づいた点として以下のようなものがある。

(1)訪問先選定における「ふれあい体験」の問題点

訪問先が保育園や幼稚園への訪問に偏っているため、実質的には特定の年齢の児童との「ふれあい」に限定されてしまう。「ふれあい体験」の場を子育て支援ルームなどにうつすことで、より多様なふれあいにつながるものと考えられる。

(2)保護者や乳幼児に対する学習効果の検討の必要性

中学生による訪問は、それを受け入れた保護者や乳幼児にも効果が生じるものと想像される。例えば、保護者による思春期の実態の把握、普段と違う若者とのふれあいによる乳幼児の社交性の変化、生活習慣への影響などがあるだろう。こうした視野を持ちながら、総合的に調査分析を行うことで、新しい発見があるものと思われる。

(3)子育て支援ルームの有効活用

施設間連携の必要性が強調されている現状を踏まえれば、附属中学校及び関連施設と大学との協力は今後ますます必要になるものと思われる。地域の子育て環境づくりの推進を図ることだけでなく、子どもや教育に対する意識の向上を図る上でも、子育て支援ルームを教育に活用することは意義があると考えられる。

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