メタ言語能力の活性化に基づく英語の多義語学習に関する実証的研究 教科教育実践開発専攻 言語系教育コース[国語]・准教授 菅井 三実

研究目的

(1) 研究目的(何をどこまで明らかにしようとするのか)

 本研究課題では、(ⅰ)日本語との複眼的な視点に基づくメタ言語能力の活用と、(ⅱ)コア理論に基づく派生過程の視覚的提示という2つの組み合わせによって、英語の多義性を日本語によって適切に解釈し、英語の基本語彙を使いこなせるようになるかどうかを検証することを目的とする。肯定的な結果が導出された場合には、広く活用可能な形で視覚教材を標準化するところまでを本研究課題の目的に含めることとしたい。。

(2) 学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 英語の語彙を吸収するためには頻度を高める必要があると同時に、できるだけ具体的な文脈の中で理解するという条件も求められるが、これを実際の英語の授業の中で実現することは容易ではないため、このような条件をクリアする方法として認知意味論的な手法を導入するというのが本研究課題の試みである。これによって、中学生レベルで多義を積極的に理解する力の向上が期待される。

(3) 国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 認知意味論における「コア理論」は、1990年代初頭から田中茂範氏(慶應義塾大学)らによって牽引されてきた研究であり、NHKの語学番組や各種学習図書を通して普及が進んできたが、高校生ないし大学および社会人レベルの英語学習者を対象とするものであり、中学生レベルの実践例はほとんどなく、この点に、本研究課題の先駆的な側面がある。

(経緯・背景)

 本研究課題の背景として、申請者は平成28年度における「理論と実践」の共同研究で中学校における文法指導に関する実践研究を実施したが、その中で、英語の基本的な語彙の理解に生徒が困難を感じている現象に気づくに至った。この意味で、本研究課題は前年度における「理論と実践」の共同研究の継続的な性格を持ち、そこから導出された新たな課題に取り組むものである。

haveのコア図

一般に、語彙は基本的なものほど多義になる傾向が強く、英語の語彙学習においては多義に異なる日本語訳を対応させなければならなくなるが、学習者は1つの語に1つの日本語を対応させて理解する傾向があるため、例えば、have と言えば「持つ」という訳語しか持たず、「食べる」や「飼う」などの日本語を表現できる動詞として理解できていないケースが多い。

このような問題を解消するための一つの方法として、メタ言語能力の活性化という前年度の実績を活かしながら、認知意味論でいうコア理論を中学生に導入することの可能性を検証する必要性を認識するに至ったところである。

Page Top