教科の本質的なねらいとのバランスがとれたクロスカリキュラムの研究 附属中学校・校長 山本 忠志

研究目的

 クロスカリキュラムのこれまでの実践では,設定した資質・能力の獲得に特化するあまり,教科の本質的なねらいが崩れてしまうということが懸念される。ゆえに資質・能力を獲得する取組と,教科としての本質的なねらいとのバランスが,研究の重要なポイントと考える。それらを解決していく手立てを探ることが,広く公立学校での実践につながるのではないかと考えている。これまで偶発的に生まれてきた学びに必然性を持たせるシステムを確立することにより,学校組織として生徒たちの知的好奇心を引き出し,主体的・対話的で深い学びへつなげていくこと。そして,このような教科の本質的なねらいとのバランスがとれたシステムづくりを進め,広く公立学校での取り組みへと還元することを研究の目的とする。

 生徒の学びという視点から本研究が有効であるかについて,また公立学校に対して活用できるものであるかという視点についても検証を行う。検証方法については,生徒の学びから見取るものと,他校にどれだけ還元できているかを分けてみていきたい。生徒の学びを質的データと量的データの両方によって見取っていく。質的データを見取るために,昨年度まで本校で研究を進めてきた1枚ポートフォリオを活用する。量的データを見取るために,事前事後アンケートを行っていきたい。

 また,研究会等で提案した内容がどの程度他校の取組に還元されているかも検証する必要がある。本校の職員の取組状況を勘案しつつ,研究会の参加者アンケートや,後日の取組についてのアンケート調査などから短期的には次年度の研究活動に活かされるものになっているか,長期的にはそれが他校で実現されているかを見取っていきたい。

(経緯・背景)

 主体的・対話的で深い学びに向かう姿勢を培っていくには,一つの授業の枠にとどまらない教科横断的な取り組みがこれからは必要となってくる。新学習指導要領にカリキュラム・マネジメントが示されていることもあり,本校では現代社会における諸課題を解決する資質・能力を獲得させる教科横断的な取組の柱となるクロスカリキュラムの研究を進めていくことを決めた。しかし,まだまだクロスカリキュラムについては実践事例が少ない。そこには実践に至らない何らかの理由があると考えられる。本クロスカリキュラムの研究に先立って,平成29年度の研究会においてクロスカリキュラムについての実践を行ったが,授業に取り組んだ職員や研究会の参加者の多くはクロスカリキュラムに対する必要性を感じていた。しかし,これを自校に持ち帰り継続的に取り組んでいくことの難しさを感じている声が多くあがったのも事実である。こういったことから,教科間の壁とシラバス作成にかかる時間や労力などがクロスカリキュラムに取り組む上での課題となることが予想される。そして,この実践の中で,設定した資質・能力の獲得に特化するあまり,教科の本質的なねらいが崩れてしまうということが懸念される。ゆえに資質・能力を獲得する取組と,教科としての本質的なねらいとのバランスが,クロスカリキュラムを研究していく上で重要なポイントと考える。それらを解決していく手立てを探ることが,広く公立学校での実践につながるのではないかと考えている。これまで偶発的に生まれてきた学びに必然性を持たせるシステムを確立することにより,学校組織として生徒たちの知的好奇心を引き出し,主体的・対話的で深い学びへつなげていきたい。このような教科の本質的なねらいとのバランスがとれたシステムづくりを進め,広く公立学校での取り組みへと還元する実現可能な研究を進めていきたいと思い,この主題を設定した。

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