地震合同訓練をとおした防災教育の効果と課題-ESDの視点から- 幼年教育・発達支援コース・教授 附属幼稚園・園長 横川 和章

研究目的

 本研究では、合同防災訓練をとおして、各校種に応じた内容と共通に認識すべきものを明確にする。
さらに、今後の学校生活等における減災・防災の教育の重点事項を整理し、何を実施すべきであるのかを明文化し、子どもたちの安全を確保し、安心をもたらすための教師としての課題を明確にすることが第1の目的である。第2の目的は、ESDの観点から、訓練をするだけではなく、自然の恵みと脅威の両面から分析することで、子どもの発達段階に応じた人としての自然との関わり方について、探求することである。

学術的な特色・独創的な点

 本研究は、地震の際の合同訓練をとおして、本附属学校である山国地区の特性を活かした独自の内容を開発する。その内容は、行動から課題を明確にし、それを日々の学校生活の中でどのように実施していき、教材化するのかという実践から理論を導き出す方法をとる。従って、理論面では、ESDの概念を用いて、0歳児から附属学校園等での15歳までの一貫したものを考案する。学術的な独創性は、地震とESDの関わりである。また、乳幼児期から就学時までの発達応じた内容開発はこれまで全くみられないものであり、本研究の独自なものである。

国内外での当該研究の位置づけ

 防災教育についての研究は、大学によっては防災の関連センターを立ち上げ、最近5カ年では特に増加しており、中でも教員養成課程としての開発は、他大学でも2-3年前から開始され始めている。しかし、いずれも小学校以上の校種が中心であり、就学前の教育では訓練実施とその振り返りが中心である。本学では28年度に就学前教育における防災教育とESDをテーマにした国際シンポジウムを実施し、台湾で教材開発をしている翁先生を招聘し研究を開始したところである。防災教育における理論と実践の観点からのアプローチはまだ稀少である。

(経緯・背景)

 本学の立地は、23年前に起こった阪神淡路大震災があり、その後大学院の教育課程に地震に関する科目が設置され、現在にいたっている。これは、現職教員への授業として特色あるものだが、これから教員になる者にとっての授業開発は実施されていなかった。その後東北大震災をはじめ、各地域で地震が頻発しているが、平成31年度からの教員養成の新カリキュラムには、防災教育は必修となっていない。しかしながら、学校教育を安全で安心のある所とすること、そして、震災後は、避難の地域拠点となる学校として、教員の役割は大きく、防災意識を高くもって、行動にうつせる人材を養成することは優先すべきことであると考える。

 そこで、近い将来、本学の授業科目として教育課程に入れ込む必要性を感じたが、そのための教材開発の必須であることが明らかとなった。それらの教材開発のために、「ESDと防災教育」を中心に考え、30年度には、始めて子育て支援ルームの親子も含めた附属学校園の合同訓練を実施することとなった。

 また、研究面では、昨年、本学の就学前教育カリキュラム推進室主催の国際シンポジウムで「ESDと防災教育」のテーマで実施した。そこでは、台湾で先駆的な研究を進めている翁教授から基調講演、神戸市立幼稚園での20年以上継続されている取り組み、福島の震災後に実地教育を進めている報告を受け、特にESDを基底として自然のもつ恵みと脅威、今後に継続していくべきこと、そして過酷な状況での生き延びていく創意工夫の力の養成こそが、重要であることが確認出来た。

 防災訓練を実行するだけではなく、研究的に捉えて教材として深め、次世代につなげていくことが確認された。それこそが、「理論と実践」にふさわしいテーマであると考えている。

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