小学校国語科「活用型」単元における評価方法の研究―学びの価値をメタ化する活動に着目して― 教育実践高度化専攻・小学校教員養成特別コース・教授 勝見 健史

研究目的

①交付期間内に明らかにすること

 本研究では、小学校国語科「活用型」単元の指導過程おける評価の在り方について、評価時期(いつ)、評価主体(誰が)、評価内容(何を)、評価方法(どのように)、価値のメタ化をはかりながら児童の学習に還流させていくのかという点について、その具体的方法を明らかにする。また、明らかになった評価方法は、一般化した表現形式で再構成・体系化し、豊岡市内の全ての公立小学校に汎用される「豊岡市国語科カリキュラム」の運用方法として、配付される冊子に内包させるものとする。

②この研究(計画)の学術的な特色・独創的な点および予想される結果と意義
〈学術的な特色・独創的な点〉

 本研究では、以下の3点を特色づけることができる。第一に、これまで主として単元組織論や活動組織論を視点に検討されてきた国語科「活用型」単元の指導過程の在り方を、評価論を視点として再解釈することである。第二に、教師側から児童側への一方向的な評価を、教師と児童が共同的に行う評価として転換し、その具体的方法を検討することである。第三に、学びの価値をメタ化する活動を指導過程に位置づけ、児童自身が自覚的・自己修正的に学びに還流させる評価の方法を明らかにすることである。

〈予想される結果と意義〉

 本研究で予想される結果と意義は以下の2点である。第一に、学校教育現場で行われる「活用型」単元において、活動主義に陥ることなく「どのように力をつけるか」を指導過程で明確に意識した実践が展開されることである。第二に、研究成果の「豊岡市国語科カリキュラム」への反映により、授業改善の方法が広く市内各校に普及することである。

③国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 国語科単元における評価にかかわる先行研究として、首藤(2000)、世羅(2005)は、国語科単元指導における学習目標(めあて)と指導目標(ねらい)の二重構造化、およびそれらを接近させるための評価方法論の必要性について指摘している。この点は、本研究における活動主義を克服する方策を考える視座となるものである。竜田(2010)は、首藤論、世羅論の今日的意義と発展性を検討し、授業過程における「学習意義についての自己評価」の位置づけの重要性を主張している。また、田中(2012)は米国の「真正の評価」論から、評価における教師と児童の役割の見直しをはかることの必要性を提唱している。これらの先行研究は、本研究で明らかにする国語科「活用型」単元における評価方法の検討および評価における教師と児童の位置について多くの示唆を与えるものである。

(経緯・背景)

 現在、国語科「活用型」単元の実践が各地で行われている。このような国語科における「活用型」単元においては、児童にとって意味あるひとまとまりの課題解決の過程において、必要な言語能力を自覚的に活用する言語運用能力が重要となる。換言すれば、従前の教科学習で見られた教師側から一方的に付与される受動的な評価から、教師の支援を受けながら児童自身が評価活動に参画し、自覚的に自らの言語活動の状況を確認・修正する評価への転換が必要視されるものである。この点が看過されれば、言語活動が児童側に放任されて、力をつけることが意識されない表層的な活動主義に陥る危惧が生じるものである。
 申請者は、これまでに、「活用」型単元におけるメタ思考の重要性を指摘するとともに、児童のメタ思考を学習促進に生かす「ポートフォリオ評価」の研究(2006)や、学習の自律化に機能する「学習のてびき」に関する研究(2007)、児童の「PISA型読解力」育成のための教師の「メタ認知的支援」に関する研究(2008)等、国語科単元の指導過程における評価や教師の学習支援の在り方について研究を行ってきた。
 これらの研究成果を、特に、豊岡市が現在重点的に取り組んでいる「活用型」単元の実践研究と融合させ、評価を手がかりに授業を改善する具体的方法として提起したい。

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