被災地宮城県の子どもの実行機能及び自己制御能力の向上に関する研究 学校心理・発達健康教育コース・教授 松村 京子

研究計画・方法

【平成27年度】

 被災地宮城県の幼稚園5歳児にSTARTプログラム実行機能関連レッスンを実施し,実行機能及び自己制御力に対する効果を明らかにする。プロジェクトメンバー全員で子どもの個別測定を行う。そのため,測定のための8人分×2回(実施前と後の測定)の旅費,さらに各クラスで子どもの指導に当たる教諭を対象とした研修のための2人分×2回(実施群と対照群の研修)の旅費が必要である。

1. プログラム参加者

 事前に幼稚園・保育所の子どもの保護者に紙面で説明を行い,同意を得た園児に対してアセスメントを実施する。対象児は5歳児約100名とする。

2. プログラムの内容

 STARTプログラムの中の実行機能に関わる6レッスンを実施する。各レッスンは10~20分である。

3. プログラムの実施及び評価方法
(1) 研究の手続き

 実施園を2グループに分けて時期をずらせてプログラムを実施する(図1)。グループ1は11月~12月,グループ2は1月~2月に実施する。両グループともに10月末にプログラム実施前のアセスメント(PRE),12月末に実施後のアセスメント(POST)を実施する。グループ1におけるPREとPOSTの変化をプログラム実施群の変化,グループ2におけるPREとPOSTの変化を対照群の変化として,実施群と対照群の比較を行うことからプログラムの効果を検証する。

(2) 指導者及び評価者の実施前トレーニング

 STARTプログラム実施前に,各園でのプログラムの実施教員に対して,(株)医学映像教育センターから発行しているDVD(松村,2011)を使用して指導方法について研修を行う。アセスメント実施者に対しても実施方法の研修を行う。

(3) アセスメント方法

1) 子どもに対する直接測定
 ①Head-Toes-Knees-Shoulders (HTKS) Task (McClelland, 2011)
  著者の許可を得て筆者が作成した日本語マニュアルに基づいて実施。
 ②逆唱課題 (日本版WISC-Ⅲの下位尺度)
 ③手の動作課題 (K-ABC の下位項目)
 ④フルーツ・ベジタブルストループ課題 (Loher & Roebers, 2012)
2)教師による子どもの行動評価
日本語版Teacher Rating Form (TRF) (Achenbach, 1991; 井潤, 2001)
3) 授業中の子どもの活動状態
子どもの通常の活動状態をビデオ録画し,教師の指示に対する子どもの反応性を分析する。

【平成28年度】

 小学校入学後の子どもの授業中の学習行動をビデオ録画し,各児童の教師の指示に対する応答性を調べる。また,学業成績についても調査を行う。そして,小学校1年時の行動応答性と学業成績に就学前の実行機能及び自己制御力が影響を及ぼすのかを明らかにする。

Page Top