特別支援学校知的障害職業学科における職業教育に関する介入研究:長期的に働くための資質を育む学習内容の開発と評価 学校心理・学校健康教育・発達支援コース 岡本 希

研究計画・方法

【平成30年度】

対象者:特別支援学校に通学する軽度知的障害を持つ中等部の生徒30名。
研究内容:(1)職業教育の効果に関する客観的評価尺度の開発
(2)木工作業を通しての職業教育の介入効果の評価
介入内容:介入群には長期的に働くことを可能にする資質を育む学習内容(時間厳守・着席・挨拶・身だしなみ・聞く力・質問する力・木工作業の手順・報告・片付け等)を、非介入群には従来通りの授業を実施。
介入期間:週1回50分授業×6回。
評価項目:職業教育の効果に関する客観的評価尺度、ソーシャルスキルトレーニング(SST)尺度、就労スキル尺度、授業開始時の心拍数と身体活動量、木工作業の成績、生徒による授業感想。ベースライン時と介入後に評価を実施。

Ⅰ①-1:職業教育の効果に関する評価尺度の開発

(岡本:文献収集とデータ解析の指導; 松本:質問項目および選択肢の選定、データ収集) 本研究では、時間厳守・着席・挨拶・身だしなみ・説明を聞く力・質問する力・木工作業の手順・報告・片付け等についての約30項目の質問を作成し、学習の習得状況を可否について客観的な文言で評価する選択肢を作成する。下記に一部の例を示す。
Q1 時間厳守→ 1. 5分以上の遅刻  2. 2分程度の遅刻  3. 教室内にいた
Q2 着席  →教諭の登壇時、1.着席せず 2.着席したが、足組みや斜め座り 3.前を向いて足を下ろして着席
Q3 分からない時に質問できる→1.できない、落ち着かなくなる 2.できない、作業が止まる 3.できる

 尺度の原案の完成時に、中等部の生徒15名を対象に、学校内外の教諭・養護教諭、公衆衛生学専門家、兵庫教育大学修士課程大学院生(年齢20~50歳代、男女含む)による評価を行い(予備調査)、評価者間の一致度(級内相関係数)を算出する。一致度の低い質問および選択肢は再考し修正する。

Ⅰ①-2:軽度知的障害を持つ中等部生徒を対象とした長期的に働くための資質を育む学習内容の開発とその効果の検証(岡本:研究計画の立案とデータ解析; 松本:担任と保護者への協力依頼、学習内容の選定、データ収集と解析)

非介入群15名
(学校側と協議の上で、介入群と同学年の他クラスあるいは次年度のクラスを非介入群として設定する)

Ⅰ②について

調査場所と対象者は、研究分担者が勤務する特別支援学校(大阪府豊中市)でその中等部生徒である。設備費用は必要ないが、研究代表者の学校までの出張旅費を計上した。調査票開発段階でアルバイトの評価者に渡す謝金を計上した(3名分)。データ収集に必要な調査票と検査用紙、資料整理ファイル、データメモリの消耗品、心拍計と身体活動量計の費用を計上した。

Ⅱについて

本研究の実施に関して本学の倫理審査委員会に申請し承認を得る予定である。木工作業を通しての職業教育(長期的に働くことを可能にする資質を育む学習内容)の効果を評価するためには非介入群(統制群)の設定が必要である。学校と保護者に十分に説明し同意を得る。生徒と保護者には研究分担者と学級担任から説明し、学校便りでも通知する。調査への参加・不参加(授業には出席するがデータ解析に含めないこと)は対象者の自由意志に基づくことや成績に一切関係しないことを説明する。データは厳重に研究代表者の研究室で管理し、データ解析では連結可能匿名化にし、学会発表や論文では個人を特定できない形式で発表する。

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