身体接触を伴う運動「組ずもう」の教育的効果-集団凝集性の観点から- 小学校教員養成特別コース・准教授 筒井 茂喜

研究の概要

 近年,学校現場では子どもの学級集団への所属意識が低く,集団として機能できない状態,いわゆる学級崩壊が増加している。著者らは学級崩壊を引き起こす要因の一つに,児童・生徒の「他者の立場に立ち,他者の感情を共感的に理解する力の低下」があるのではないかと考えている。著者らは,先行研究(著者ら,2011,2012,2014,2015,2016)の結果から,身体接触を伴う運動によって生起する「身体への気づき(圧力,動き,息づかい,体温,心拍など)」から相手の気持ち(努力,本気,緊張,不安など)を主観的に認知する行為は,相手への共感的な心情を生起させ、相手を基層から理解することに結びつくと推察している。すなわち,身体接触を伴う運動は,「他者の感情を共感的に理解する力」を培うことに寄与できるのではないかと考え,身体接触を伴う運動の教育的効果の内実を明らかにしようとしている。

 本研究は,身体接触を伴う運動「組ずもう」の教育的効果の一つである全力を伴う身体接触によって生起する「身体への気づき」から,相手の気もちを主観的に認知する行為が学級の「集団凝集性」に及ぼす影響を検討するものである。すなわち,小学校2年,4年,6年生児童に身体接触を伴う運動「組ずもう」の授業を実施,「よい授業への到達度調査」「身体への気づき調査」「集団凝集性調査」によって,単元前後の「集団凝集性の変化」,また, 「身体への気づき」と「集団凝集性」および「集団凝集性」と「体育授業への好意的態度」,それぞれにおける関連性を検討する。

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