シリーズ「コロナと教育」(濵中裕明教授インタビュー2)

#インタビュー #コロナと教育 #濵中裕明

シリーズ「コロナと教育」は、本学の教員に、それぞれの専門領域の見地から、コロナのこと、教育のこと、人生のことなどを語ってもらうインタビュー企画。
第二弾は、濵中裕明教授です。

国語は苦手。でも、算数が大好きだった少年は、長じてから数学者になりました。
専門は、代数的位相幾何学。兵庫教育大学に着任してからも、数学研究の一本道をまっしぐらに進んできましたが、35歳のとき、数学教育へとその軸足を移します。
数学を何かの役に立つ「実用品」としてだけでなく、数学そのものの面白さを伝えられる教員を育成するべく、日々心血を注ぎつづけて15年。
人生100年時代の今、50歳の大台に乗り、後半戦に足を踏み入れられた濱中教授に、人生のこれまでとこれから、そしてコロナ禍の今について伺いました。



|話し手|濵中裕明教授 |聞き手|佐田野真代(広報室員)・永井一樹(広報室員)

第2回:おやじの手土産

N:先生のご専門は幾何学。Wikipediaの先生の記事には、代数的位相幾何学がご専門と書かれています。なるほど...。難しい学問でありそうなことだけはわかります。子どもの頃から、算数がお好きだったんですか?

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濵:好きでしたね。私は小学校6年生から塾に行ってたんですけど、月例テストというのがあって、算数はほぼ100点だったのを覚えています。だから、いつも塾の成績ランキングに名前が載るんです。でも、国語は一度も載ったことがなくてね。

S:生まれながらの理系脳だったと。

濵:どうなんですかね。とにかく算数が好きでした。国語が本当に嫌いだったんですけど、今となっては普通に文系の仕事をしていて、数学教育の方がメインになっています。学生に「文章がなってない!」とか偉そうに言ってるんですけど、私の親が聞いたら笑うだろうなと思いますね。

N:国語が嫌いということは、読書とかもあまりされなかったのでしょうか。

濵:読書はする方でしたね。子どもの頃はよく読んでましたよ。

N:どんな本を。

濵:例えば小学生の頃は、『だれも知らない小さな国』っていうシリーズがあるんですけど、あれははまりましたね。あと何読んでたかな。中学生になってからはもう理系の好きな本しか読まなくなって。ひたすらブルーバックス読んでました。


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S:ブルーバックス?

N:自然科学系の新書シリーズです。図書館にもありますよ。

濵:ブルーバックスといっても、生物学とかはあまり読まなかったけれど、物理と数学とパズルの本は片っ端から読んでました。

S:理系への関心の強さは、何かご両親の影響とかあるのでしょうか。

濵:ないと思いますけど。別に理系の親ではないので。

S:何か理系の方になびく原体験のようなものがおありなんでしょうか。

濵:う~ん、どうかな。うちのおやじが時々、お土産だって言って算数の問題集買ってきたんですよ。それをただ解いてただけですね。

S:お土産に問題集(笑)。

濵:親の影響といえば、おやじの趣味がナイフの蒐集だったんです。別に殺人鬼じゃないですよ。それで私もナイフ好きなんです。手元にきれいなナイフをそろえて、自分で磨いたりするのが楽しい。人によっては見るのも嫌っていう人もいるかもしれないけれど。


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S:私にはない趣味ですね。

濵:数学の魅力を伝える際に、私はよくこのナイフのエピソードを使うんです。ナイフなんてただの実用品だろうって言う人もいると思います。同様に、数学なんて実用で使えばいい、数学の公式だけ覚えとけば使える実用品だろうって言う人もいるかなと思うんです。でも、ナイフそのものを磨いたりコレクションしたりするのが楽しいのと同様に、数学も実用品というよりも、数学そのものを磨いたり、自分でいろんなものをコレクションするのが楽しいんですよと。よく授業ネタで使いますね。(第3話につづく)

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