
課題①「外来教育長の選定手続きと心理的受容の検討」:外来型教育長の登用状況および選定手続きに関して、首長をはじめとする関係者への聞き取り調査を行い、選任のパターンを整理する。同時に選任に関わる要素を抽出し、手続き的公正要素(Leventhal,1980)、集団成員性に関する理論(Tajfel & Turner,1970;Hoggs & Abrams, 1980)から評定する。関係者の心的反応との関連で評定結果を分析し、選任時のいかなる要素が外来型教育長への初期の心理的受容・非受容に関連するかを明らかにする。
課題②「教育長のリーダー行動がもたらす影響の因果分析」:手続き的公正リーダーシップ論(Lind & Tyler,1990;竹西・竹西,2006)に基づき、教育課題解決に向けた施策を推進する際のリーダー行動、すなわちその際の手続きやフォロワー(教育委員会組織・学校・地域)に対する姿勢・コミュニケーションが、双方の信頼形成および協働的態度にいかに影響するかを量的分析により明らかにする。フォロワーを対象とした質問紙調査によるデータを従属変数に、教育長の行動評価を独立変数にした重回帰分析および構造方程式モデリングを用いる。モデル式に課題①で得られた就任時の心理的受容度や選任パターンを追加の独立変数として投入することで、外来型教育長に特徴的な影響因を明らかにする。
課題③「教育長の施策・行動と首長・議会の動向との関連性分析」:教育長の行動・施策を自治体行政内のステークホルダー(首長、議会、総合教育会議)との関連で、教育長が受ける制約的側面と教育長が及ぼす影響的側面の双方から検討する。ここでは首長の公約・発言、総合教育会議や議会の議事録等の質的分析を行うことで、対象自治体の特徴や政治的文脈および教育課題との関連で、外来型教育長のリーダー行動の特徴、他の行政ステークホルダーとの相互作用の様相を明らかにする。
課題④「外来型教育長の変容と成長」:教師のライフヒストリー研究(高井,2024)を外来型教育長に応用し、半構造化面接により「いかにして教育長になるのか」という、教育長への生成変容過程を個別具体的に示す。自治体の特徴(人口規模、地域特性、政治的文脈、教育課題)に加えて教育長個人の特性(キャリア・人脈・資質能力等)の対立葛藤調整の中で生じる「文脈応答性」(露口・藤原,2023)を検討し、課題①から③との関連で考察する。
統合的考察:課題①から④で得られた結果から4側面の相互影響を含めて解釈し、外来型教育長のリーダーシッププロセスの全体像を考察する。
本研究は、澤野が現場の問題意識や実践知からの課題を提案し、竹西が社会心理学の理論・知見を応用しつつ、教育行政における先行研究の知見を合わせて、実証的研究計画へ発展させたものである。そのため本申請研究の代表者は竹西であるが、澤野も副代表者として研究全体の遂行に関わる。他の分担者は分析モデルに設定された4つの課題を達成するためにふさわしい専門性を持ち、かつ課題に応じた分析手法に精通した人材が学内のコースを越えて結集した。以下に課題ごとの担当者を記す。
課題①「外来教育長の選定手続きと心理的受容の検討」竹西・澤野・澤山
課題②「教育長のリーダー行動がもたらす影響の因果分析」竹西・澤山
課題③「教育長の施策・行動と首長や議会の動向との関連性分析」澤野・川口・三浦(奈)
課題④「外来型教育長の変容と成長」大関・三浦(智)。
なお統合的考察は、竹西・澤野・大関を中心に、他の研究分担者も交えて全員で行う。
研究倫理規定に則る。
人を対象とした浸潤の少ない介入研究として、本学の研究倫理審査を受ける。
○R.8年度(2027.3月予定)
神戸キャンパスにおいてシンポジウムを開催する。
参加対象者;学内・学外の研究者、教育長・教育行政関係者、対象自治体関係者、その他。
○R.9年度(2028.3月予定)
研究成果を「兵庫教育大学教育実践学叢書」にまとめて審査を受け、刊行をめざす。