平成15年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- 青少年の危険行動と学校教育 -総合的発達支援及び養護性の育成-
- プロジェクトの期間
- 平成15年度~平成17年度
プロジェクトの概要
急激な少子・高齢化や国際化、情報化などわが国の社会は大きく変化している。それに伴い、青少年には、いじめ、喫煙・飲酒・薬物乱用、性の逸脱行動、過食・拒食、自殺、暴力等の少年犯罪などの深刻な問題が多発している。これらのいわゆる「危険行動」は、行為の結果が重大であり、対処療法が困難であるため、一次予防が極めて重要である。また近年,LD、ADHDと反社会的及び非社会的非行との関連性が指摘されており、危険行動防止にはその背景要因を踏まえる必要がある。一方、家庭・地域では、子どもに対する暴力や性犯罪、親による虐待など、子どもが危険行動の犠牲者となる凄惨な事件が後を絶たない。これらの危険行動や事件の発生には現在社会の在り方そのものが深く関係しているため、対策は、教育と環境の整備・改善を多面的に実施する総合的なものでなければならない。すなわち、青少年の問題対処能力の形成、物理的・社会的環境の整備・改善、学校・家庭・地域の連携による推進などを併せ持つ必要がある。総合的な対策の中で、多数の子どもたちに働きかけることができ柔軟性に富む学校教育は、非常に重要な役割を果たすことができる。学校教育は,その直接的機能である問題対処能力の形成や家庭・地域等との連携に加えて、一見無関係である環境整備についても、その重要性の認識や改善のための諸能力を子どもたちに形成することができる。このように学校教育の可能性は極めて高く、その機能は、危険行動防止のための総合的な発達支援を行うものと言えよう。さらには、子どもたちが、将来、暴力や虐待の当事者になることを防ぎ、住民として地域の子どもたちを育成することからすれば、身近な人々や家族に対する養護性の育成を目指すものとも言える。現在、申請者らは兵庫教育大学附属小学校で文部科学省開発研究として特設教科「人間発達科」を立ち上げ、学校教育のなかで社会性・養護性を育もうとする取り組みを実施している。その取り組みを学校から家庭、地域へと展開させることが期待されている。
そこで、本研究では、兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科を構成する兵庫教育大学,上越教育大学,鳴門教育大学,岡山大学に在籍する研究者の学際的共同研究により,青少年の危険行動防止を目指と共に、子どもたちの総合的発達を支援し養護性を育てるプログラムを開発することを目的とした。そして、そのプログラムが実施可能なものにするために、プランニングから実施に至るまでの組織作りを行い、ワークショップを開催する。
本研究には以下のような特徴がある。
- 学校教育を中心に、家庭、地域の機関や団体、専門機関等と連携したプログラムである。
- 危険行動予防(一次予防)を重視するが、危険行動の早期発見・早期対処(二次予防)、家庭や危険行動頻発者への支援(保健・医療機関の支援や治療)を含む。
- プログラム開発に際して、危険行動や養護性の概念規定、危険行動の関連要因の分析、諸外国のプログラムの分析、試作プログラムの実施・評価・改訂などを綿密に行い、国際的にも通用する高度な研究レベルを有するものとする。
- 研究成果を世に問うために,公開シンポジウムあるいは国際会議を主催する。
- プログラムの製品化を目指し、成果の社会還元や社会的アピールを図る。
プロジェクトチームは、多面的な研究を遂行できるメンバーで構成した。世界的にも有数の包括的プログラムを開発できるものと期待される。
期待される成果
- 包括的プログラムの具体的モデルの提示
- 包括的プログラムによる危険行動防止の効果
- 専門大学院におけるプログラムの有効性の検討
- 包括的プログラムの製品化・パッケージ化による社会貢献・社会還元
- わが国における大規模研究への足がかり、国際的なプログラムへの発展、国際的なアピール
- 保護者や地域との連携
- 健康日本21、健やか親子21などの全国的運動に対する学校教育の貢献
チーム構成員
プロジェクトに参加する研究科教員
チーム構成員氏名 | 連合講座 | 大学 | 職名等 | 役割分担 (◎はチームリーダー) |
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勝野 眞吾 | 生活・健康系 | 兵庫教育大学 | 教授 | ◎研究の総括と学校教育における位置づけ |
松村 京子 | 生活・健康系 | 兵庫教育大学 | 教授 | 学校教育を通じた養護性の 育成プログラムに関する研究 |
今塩屋 隼男 (~H16.09) |
学校教育臨床 | 兵庫教育大学 | 教授 | 学校を基盤とした発達支援プログラム開発 |
渡邉 満 | 学校教育臨床 | 兵庫教育大学 | 教授 | 青少年の危険行動に関する 学校道徳教育の役割についての研究 |
藤生 英行 | 学校教育臨床 | 上越教育大学 | 助教授 | 児童・生徒の危険行動・問題行動と その防止に関する研究 |
高橋 香代 | 生活・健康系 | 岡山大学 | 教授 | 青少年の危険行動関連要因の疫学的分析 |
西岡 伸紀 | 生活・健康系 | 兵庫教育大学 | 教授 | 青少年の危険行動に防止に関する 学校・家庭・地域の連携プログラム開発・評価 |
吉本 佐雅子 | 生活・健康系 | 鳴門教育大学 | 教授 | 青少年の危険行動関連要因 (生活習慣病のリスク)の疫学的分析 |
プロジェクトに参加する院生
氏名 | 配属大学・連合講座及び・学年 | 主指導教員 | 役割分担 |
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森脇 裕美子 | 兵庫教育大学・生活・健康系 教育連合講座・D1 |
勝野眞吾 | 青少年の危険行動とその予防に関する 諸外国資料の収集と分析 |
多田 由紀子 (~H16.09) |
兵庫教育大学・生活・健康系 教育連合講座・D2 |
今塩屋隼男 | 学力及び学習能力に関する 包括的検査等に関する内外資料収集・分析 |
共同研究プロジェクト研究員
氏名 | 所属等 | 推薦教員 | 役割分担 |
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永井 純子 | 兵庫教育大学非常勤講師 | 勝野眞吾 | 青少年の危険行動に関連する健康教育の国際比較 |
※職名は平成16年4月1日現在による。