平成17年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- 教育実践学の理論構築及びモデル研究
- プロジェクトの期間
- 平成17年度~平成19年度
プロジェクトの概要
プロジェクト研究の趣旨(教育実践学の総括及び課題と展望)
連合学校教育学研究科設立10周年を迎えるにあたり,その学的存立基盤である教育実践学の構築の歩みを振り返り,成果と課題について検証を行うことが必要である。教育実践学の特性を概略として示せば,教育理念型の研究のみならず教育実践に基づく方法概念を主眼とした研究動機を併せ持って学的追求を行うものであろう。つまり教育実践のダイナミクスを静的に記述するだけでなく,教育の現代的課題にも応えうる実践の再構築に貢献する実践的な知的共同体の形成を目指すものであると考えることができる。このプロジェクトの目的は,過去10年の教育実践学研究が現代の教育現象をどのように反映し,どのような学的,実践的貢献を行い得たかを総括すると共に,世界的な教育諸科学の動向を見据えて実践学としての新たな自己意識の定立と今後のパースペクティヴを見いだすことである。
研究内容
- 教育実践学に関連する基礎的な教育理論の動向把握
旧来の教育学を含む教育科学が,教育的営為を対象とする性格から学問的自立性を問われてきたように,教育実践学もその学的根拠の説明責任を問われている。この教育実践学の性格を多面的に描写するために「教育実践学の構築第2集(仮称)」の発行と並行して,教育実践学の構築に資すると考えられる教育学や実践的な性格をもつ教育研究の動向を把握するための文献調査を国内のみならず海外のものを含めて行う。対象とする文献の種別としては,教育の理論構築に関するもの,教育の社会的課題と学校教育の関係性を問うもの,教育実践を主軸に据えた教育研究の方法に関するもの,現代の教育課題と学校教育の制度的な課題を問うもの,教育課程編成の論理と実際に関するもの,各教科における授業論モデルを対象とするものなどがその主なものとなる。 - 教育実践学の研究モデルの追求
上記の文献研究の過程で,教育実践学のモデル理論とは何かに関する分析を行い,教育諸科学との関連性を明確にしながら,教育実践学のモデル化の検討を行う。教育実践学を標榜する上で,実践学論文の質と性格が外部評価の対象となることを考えればこの検討は非常に重要である。近年の教育研究手法としては,殆どが欧米の研究手法に依拠したものであるが,これらの研究手法についても批判的検討を行い,「感性」研究が国際的にも"Kansei"という認知を得ようとしているように"Jissengaku"という固有の研究領域を形成し定着することを視野に入れたい。こうした検討過程において実践学のモデル研究論文の理念型を追求する。 - 教育実践学的展開を行う組織・機関の特定と実地調査
教育実践学に関わる研究組織として連合大学院や教育学研究科があることはもちろんであるが,より実践的な研究の場に根ざす研究を構築する上では,教育研修所や附属校との連携による実践研究の動向を把握しておく必要がある。教育センター・研修所や附属校における研究は実践学そのものの構築を主眼としていないものの,研究の成果は実践学に密接に関連する。また,そのような組織との研究連携を模索する上での前提事項としてこれらの組織における研究動向を熟知することが重要である。そうした研究の連携体制は海外でも見られる。例えば,全米教育省が1999年に発行した大学レベルにおける改革努力に関する改善指針を見ると,大学全体として,教師教育を優先課題とすること,教養と教師養成内容の密接な関係性を樹立すること,地域の学校との連携を強化すること,高度の教師養成に貢献する(教師資質の選別,評価の厳格化など)ことなどがあげられている。その具体的な方策としては,大学と教育センター,さらには附属校との連携による研究体制の構築が提起されている。こうした協同的な研究体制は当然実践的な性格をもつものであり,それを構成する教育実践学研究者には質的研究の高度化,現職教師には省察的実践者として研究と実践の複眼的な思考が求められていると言えよう。こうした点を見据えて実践学の課題化を行うための文献収集・分析及び実地調査を海外も含めて実施すると同時に海外の研究者の招聘など国際的な学的交流を実現する。 - 研究成果の教育的活用と「教育実践学の構築 第3集(仮称)」の刊行
上記の研究成果は,総合共通科目設定のあり方についての検討や教育フォーラムの編成に関する知見として活用するとともに,「教育実践学の構築 第3集」を刊行する。この第3集は,海外への情報発信を行うことも視野に入れて英語版の発行も行うことが望ましい。
プロジェクトに参加する研究科教員
チーム構成員氏名 | 連合講座 | 大学 | 職名等 | 役割分担(◎はチームリーダー,○はグループリーダー) |
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岩田 一彦 | 研究科長 | 兵庫教育大学 | 教授 | ◎研究の企画,総括 ○グループ1(総合学習・市民的資質形成に 視点をおいた教育実践学研究) |
福本 謹一 | 研究主幹 | 兵庫教育大学 | 教授 | 研究の企画,総括の補佐 グループ2(教師によるカリキュラム編成に関する 教育実践学研究) |
佐藤 真 | 方法 | 兵庫教育大学 | 助教授 | グループ1(総合学習・市民的資質形成に視点をおいた 教育実践学研究) |
渡邊 隆信 (H17.10~) |
方法 | 兵庫教育大学 | 助教授 | グループ1(総合学習・市民的資質形成に視点をおいた 教育実践学研究) |
青木 多寿子 (~H18.3) |
臨床 | 岡山大学 | 助教授 | グループ2(教師によるカリキュラム編成に関する 教育実践学研究) |
山岡 俊比古 | 言語系 | 兵庫教育大学 | 教授 | グループ2(教師によるカリキュラム編成に関する 教育実践学研究) |
中村 哲 | 社会系 | 兵庫教育大学 | 教授 | ○グループ3(教授方略の体系化に関わる 教育実践学研究) |
小林 辰至 | 自然系 | 上越教育大学 | 教授 | グループ3(教授方略の体系化に関わる 教育実践学研究) |
西村 俊夫 | 芸術系 | 上越教育大学 | 教授 | ○グループ2(教師によるカリキュラム編成に関する 教育実践学研究) |
小川 昌文 (H17.10~H18.3) |
芸術系 | 上越教育大学 | 教授 | グループ2(教師によるカリキュラム編成に関する 教育実践学研究) |
梅野 圭史 | 生活・健康系 | 鳴門教育大学 | 教授 | グループ3(教授方略の体系化に関わる 教育実践学研究) |
※職名は平成17年4月1日現在による。