平成25年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- システム的思考に基づいたイノベーション力の育成を図る 技術・情報教育体系に関する研究
- プロジェクトの期間
- 平成25年4月1日~平成28年3月31日
プロジェクトの概要
プロジェクト研究の概要
本研究の目的は,小学校情報関連内容,中学校技術・家庭科技術分野,高等学校情報科・工業科・総合学科など初等・中等教育段階の情報・技術教育において,システム的思考に基づいたイノベーション力の育成を図る技術・情報教育体系を構築することである。現在の社会では,複雑な情報環境の中で人間が共生・協働している。ただ,情報環境の中での各種システムは自動化され,我々はこれらのシステムの原理について熟慮することなく利用しているのが現状である。現実にはネットワーク犯罪や個人情報流出など,情報倫理感の欠如を含めた社会的な課題も多い。さらには,国内の情報産業の衰退の兆しも見えており,テクノロジーの潜在的な可能性ならびにその限界や危険性等についても,幅広く社会的なコンセンサスを形成しておく必要がある。一方,未来のあるべき社会の創造に向けては,現在のテクノロジーを理解した上で,論理的思考力や創造性を育み,これらをもとに対象をシステム的に捉える新しい情報感を高める教育が重要である。とりわけ,情報関連内容におけるイノベーションを創出しうる技術・情報教育体系の構築は,資源の少ない我が国の将来を展望した時,ヒューマン・リソース充実の観点からも極めて肝要である。
技術・情報教育は,ICTとものづくり双方の技術が必要であり,人間の倫理観や安全衛生の観点に加えて電気・電子工学,情報工学,ソフトウェア工学,メカトロニクス等幅広い分野から成り立っている。このような技術・情報教育における技術リテラシーを形成するためには,ICTとものづくりを統合させて俯瞰するシステム的思考に基づき,論理的思考力や創造性を発揮できる問題解決型の学習プログラムを構築していく必要がある。しかし,現在の中等教育段階における技術・情報教育は,情報活用の実践力,情報の科学的理解,情報社会に参画する態度の3要素についてその育成を標榜しているものの,情報に対する総合的な理解とイノベーションを創出する人材育成の視点,システム的思考の醸成といった観点はほとんど含まれていないのが現状である。
そこで本研究では,初等・中等教育での技術・情報教育の体系化を行い,児童・生徒のシステム的思考の育成を通して未来を精神的に豊かに生きることができるよう,技術リテラシーと創造的なイノベーション力の育成を図る技術・情報教育の体系化を行い,さらには総合的なカリキュラム開発と具体的な学習プログラムの構築を試みるものである。この目的に対し本研究では,次の各研究課題を設定する。
- 研究課題1: システム的思考に基づいた技術・情報教育体系の構築
システム的思考を伴って初等・中等教育における技術・情報教育を体系化し,その中で必要となる技術・情報教育教材ならびに学習プログラムについて考察する。
(主として,菊地・山崎・森山・伊藤・掛川・川島が担当する) - 研究課題2: ICTとものづくりの技術を統合した技術・情報教育教材及び学習プログラムの開発
電気・電子工学,情報工学,ソフトウェア工学,メカトロニクスなどの最新のテクノロジー及び,それらの基礎を形作ってきた情報システム技術の歴史的展開の両者を踏まえ,幅広い観点からICTとものづくりの技術を統合した技術・情報教育教材と学習プログラムを開発する。
(主として,菊地・大橋・小山・伊藤・掛川・竹口・森山が担当する) - 研究課題3: システム的思考及び創造的なイノベーション力に関する学習者の能力構造の分析
中学生や高校生など,学習者がシステム思考力やイノベーション力を習得する認知的なプロセスを把握し,効果的な教授・学習過程のフレームワークを構築する。
(主として,森山・山崎・大橋・小山・萩嶺・上之園・中原・勝本が担当する) - 研究課題4: 諸外国の技術・情報教育における情報システム教材及び学習プログラムの調査
諸外国の技術・情報教育の中でICTとものづくり双方の技術を統合した情報システム技術の学習がどのように展開されているかについて調査し,カリキュラムのフレームワークについて検討する。
(主として,森山・菊地・伊藤・掛川・本村・角が担当する) - 研究課題5: システム的思考に基づくイノベーション力の育成を図る総合的情報技術教育の実践
研究課題1~4の研究成果に基づき,システム的思考やイノベーション力の育成を図る体系的な情報技術教育のカリキュラムと学習プログラムを実践し,その効果を検証する。
(全員で担当する。ただし,授業実践は上之園・萩嶺・中原・勝本が担当する。)
期待される成果
プロジェクトの実施により期待される成果
本研究で得られた研究成果は,具体的なカリキュラム,教材及び学習プログラムとして現在の小学校,中学校技術・家庭科技術分野,高校情報科,高校工業科の教育実践に直接的に貢献することができる。また,本研究で導出したカリキュラム構成や教材構成のフレームワークについては,次期教育課程(学習指導要領)の改訂に向けた基礎的資料として提言に供することができる。