平成27年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- 包括的健康教育プログラム構築に向けての国際学術研究 -生命科学,行動科学,情動科学の複合領域の視点によるアプローチ-
- プロジェクトの期間
- 平成27年4月1日~平成30年3月31日
プロジェクトの概要
プロジェクト研究の概要
青少年の健康に関しては、性の逸脱行動、心の健康問題、薬物乱用などが依然として重要な現代的課題となっており、解決が急がれる。性に関する逸脱行動については、青少年の間で性行動のネットワーク化がもととなり、性感染症の拡がりとともに望まない妊娠や子宮頸がんの増加が懸念されている。心の健康については、コミュニケーションスキル、ストレス対処スキル、セルエスティームなどのライフスキル形成が十分でないことが原因で不登校など様々な問題を抱える状況となっている。薬物乱用については,世界各国で現代社会が解決すべき共通の課題となっており、日本でも中・高校生の間でMDMA(エクスタシー),違法ドラッグなどと呼ばれる新たな危険な薬物の乱用及び大麻乱用が拡がりをみせている。
子どもたちが、健康課題に対して小・中・高等学校修了段階で身に付けるべきミニマムとは何かといった議論は、生涯を通じた健康の保持増進といった視点から極めて重要である。
日本では、平成17年に開催された中央教育審議会健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会は、こうした力を考える上で、1.自他の命を大切にする、2.次の世代につながる教育、3.情報を収集し正しく理解し判断していく、4.知識を行動に結びつける力を育成する、という4つの視点が重要であるとした。
ところで、健康教育に関わる指導は、アメリカでは「保健」の教科で、イギリスでは「科学」「個人、社会性、健康教育」において取り扱われるなど、様々なアプローチで実施されている。国によって指導内容は異なると考えられるが、最終的に子どもたちが身に付けるべき目標は,ヘルスプロモーションの理念,すなわち生涯を通じる健康の保持増進という基本的かつ普遍的な理念に基づくものであることは一致している。このため,健康に関する科学的な知識や理解、基本的な生活習慣の確立の重要性を学ぶこと、さらに健康行動の定着に結びつけることは極めて重要であると考えられる。
こうした健康課題に関しては,学校教育の段階から継続的かつ系統的に一次予防の視点で進めていく必要がある。学校では,小学校から高等学校まで健康に関しては、指導することとされているが,海外の教育と比較した研究は極めて少ない。
健康課題に関する指導は、日本では、主に保健体育科において実施されているが、限られた時間の枠内で。学ぶべきことが多い。そのため、子どもたちにとっては、十分な知識理解の上で、適切な健康行動がとは言えない状況にあり、包括的な健康教育プログラムの構築が急がれる。
科学的な根拠に基づく知識理解は、健康行動にむけての全ての基盤となるものであり、生命科学・情動科学的な視点に立つ健康教育へのアプローチはこうした視点で欠かせない。
本研究の目的の第1は,我が国の生徒の生活習慣や保健、生命科学の基礎的理解やライフスキル教育など教育プログラムの状況などについて,海外と多角的に比較研究するとともに,日本の生徒に対する健康課題に対する教育プログラムを構築することである。目的の第2は,麻薬取締機関と協働し教員養成課程の大学での効果的な教員養成プログラムを開発することにある。目的の第3は,実践研究により効果評価を行い、有効性を確認することで,子どもたちの健康の維持増進に深く寄与することを目指す。
本研究では,上記の研究の成果を基盤として,兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科を構成する兵庫教育大学,鳴門教育大学,岡山大学、上越教育大学に在籍する研究者の学際的・国際的共同研究を行うものである。教育プログラムの内容を関連する周辺領域を包含して充実させるとともに,中学校から高等学校へと発展させる。