project: W(H30~R2) 研究者養成を踏まえた教科架橋型教科教育実践学の研究
平成30年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- 研究者養成を踏まえた教科架橋型教科教育実践学の研究
- プロジェクトの期間
- 平成30年4月1日~令和3年3月31日
プロジェクトの概要
プロジェクト研究の概要
本プロジェクトでは,教科架橋型教科教育実践学を構築するとともにそれに基づく教員養成系大学・学部の研究者養成の在り方についても研究する。
新たに公表された学習指導要領においてはカリキュラムマネージメントの考え方の基に各教科の独自性を踏まえた有機的な架橋による児童・生徒の資質・能力の育成が唱えられている。一方,兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程)においては,教員養成系大学・学部の教員の養成も兼ねて博士課程学生の教育・研究能力の高度化が図られ.各教科個別に教育実践学の構築が行われてきた。しかし,教科教育実践学における教科群の架橋とその具体像としてのカリキュラムマネージメント力育成の視点を取り込んだ研究には至っていなかった。そのため,各々の教科においての本質を教科間で互いに関連させながら教科架橋型として全教科的な視点から教科教育実践学について検討する必要が生じていた。また,連合学校教育学研究科担当教員の研究成果を博士課程学生への指導に還元させる必要も生じていた。
これまでの連合研究科共同研究プロジェクトでは,プロジェクトE(平成17~19年度)として"教育実践学の理論構築及びモデル研究"が行われており,またプロジェクトF(平成18~20年度)として"教育実践の観点から捉える「教科内容学」の研究"が行われてきた。さらに,日本教科教育学会の書籍"今なぜ、教科教育なのか―教科の本質を踏まえた授業づくり"の刊行や,日本教科内容学会での教科内容学の研究も行われてきた。これらは各教科の視点からの教育実践研究を統合した研究としてまとまっているものの,海外での研究成果を含めての教科を架橋した研究としてさらに発展できる可能性も残されていた。また,博士論文の体系的な分類・整理を行っているものの,博士課程学生の指導の在り方まで踏み込んだ研究には至っていなかった。
これらを踏まえ,本研究では,外国人研究者の助言も参考として教科架橋型教科教育実践学の構築を図るとともに,教員養成系大学・学部教員の養成の在り方についても考究し,研究者養成を踏まえた教科架橋型教科教育実践学について研究する。
期待される成果
プロジェクトの実施により期待される成果
学校教育における教科教育実践では,世界的に種々の提案がなされている。例えば,米国科学振興協会が1989年に提唱したScience for All Americansでは,科学,数学,技術に関するリテラシーを包含して科学リテラシーとして捉え,教育の中心的な目標として位置付けている。同様に,理系教育の融合としてのSTEM教育においても教科融合型の教育内容の検討が進められている。一方,ユネスコの教育分野ではEFA(Education for All)やESD(Education for Sustainable Development)等の視点から捉えており,国際バカロレアでは学齢に応じた教育内容の検討が行われている。
学習者個人の活動は状況の把握,情報の収集,判断・理解,情報の表現の流れとして捉えることができる。さらに,学校教育における教科の特性を自己と他者の関係から捉え直すと,自己の能力を向上させる内容,他人に自己を表現する内容,他者の理解も含めた人と人との相互のコミュニケーションに関わる内容,他者を自然界や理想像さらには社会全体として捉えてその対象に対する真理を追求する内容,他者を自然現象・社会現象・人工現象として捉えてその対象に応用・改善を与える内容等に類別される。これらに,感性に関わる視点と理性に関わる視点が加わり,教科間の関連が複雑に交差している。逆に教科を離れて別の視点から教科教育全体を見てみると,各教科間での同じ視点の学習内容同士を関連させて体系化することが可能となり,教科架橋型の教科教育実践学として構築できることが分かる。
本研究を進めることにより,これまで教科毎に行われていた学習内容を教科間で互いに関連させることが可能となり,教科間の学習内容関連図の構築が可能となる。また,関連する学習内容の順序性を設定することができ,学習者の学習を深める方策提示が可能となる。さらには,学校全体のカリキュラムデザインとして各教科が関連性を伴って授業計画を進めることが可能となる。加えて,これらの研究成果を連合学校教育研究科の博士課程学生が論文を執筆する際の指導書に反映させることにより,教科教育実践学に関わる研究者養成の質の向上にも寄与できる。
以上のように,本研究は,これまで教科毎の視点から行われていた教科教育実践学について教科を架橋する視点を含めて研究し,海外の研究成果も取り入れ,各教科の本質を関連させる新たな視点からの教科教育実践学を考究する所に意義がある。最終年度には研究成果を広報するために,学術図書の刊行を行う。さらに,教科教育実践学の研究者養成の視点を加え,教科教育実践学の考え方を連合学校教育研究科博士課程学生にも伝承できるよう,研究者養成の観点から教科教育実践学研究に関わる指導書を作成して博士課程学生の研究の質の向上も図る。
チーム構成員
プロジェクトに参加する研究科教員
氏名 |
連合講座 |
大学 |
職名 |
役割分担(◎はチームリーダー) |
(チームリーダー) 菊地 章 |
生活・健康系教育 |
鳴門教育大学 |
教授 |
◎総括ならびに 情報教育の視点からの検討 |
村井万里子 |
言語系教育 |
鳴門教育大学 |
教授 |
国語教育の視点からの検討 |
浅倉 有子 |
社会系教育 |
上越教育大学 |
教授 |
歴史学の視点からの検討 |
秋田 美代 |
自然系教育 |
鳴門教育大学 |
教授 |
数学教育の視点からの検討 |
小川 容子 |
芸術系教育 |
岡山大学 |
教授 |
音楽教育の視点からの検討 |
初田 隆 |
芸術系教育 |
兵庫教育大学 |
教授 |
美術教育の視点からの検討 |
森山 潤 |
生活・健康系教育 |
兵庫教育大学 |
教授 |
技術教育の視点からの検討 |
篠原 陽子 |
生活・健康系教育 |
岡山大学 |
教授 |
家庭教育の視点からの検討 |
プロジェクトに参加する院生
氏名 |
配属大学・連合講座・学年 |
主指導教員 |
役割分担 |
千種 彰典 |
鳴門教育大学,言語系教育,3年 |
村井万里子 |
学校における教科教育実践の検討 |
仙田 真帆 |
岡山大学,芸術系教育,3年 |
小川 容子 |
学校における教科教育実践の検討 |
吉村 昇 |
鳴門教育大学,自然系教育,3年 |
秋田 美代 |
学校における教科教育実践の検討 |
西山 由紀子 |
鳴門教育大学,生活・健康系教育,2年 |
伊藤 陽介 |
学校における教科教育実践の検討 |
プロジェクト研究員
氏名 |
配属・職名 |
推薦教員 |
役割分担 |
John Williams |
Science and Maths Education Centre, Curtin University・ Director |
菊地 章 |
STEM教育の視点からの教科架橋の考察 |
Richard Green |
D&T Association・Previous Chief Executive |
菊地 章 |
デザインとテクノロジーの視点からの教科架橋の考察 |
金富允 |
釜山大学校教育学部・教授 |
秋田 美代 |
数学教育の視点からの教科架橋の考察 |
マイトリー・インプラシッタ |
コンケン大学教育学部・教授 |
秋田 美代 |
数学教育の視点からの教科架橋の考察 |
上野 耕史 |
国立教育政策研究所・教育課程調査官 |
菊地 章 |
文部行政の視点からの教科架橋の調査研究 |
谷 陽子 |
徳島県立総合教育センター・指導主事 |
菊地 章 |
学校教育実践の視点からの教科架橋の調査研究 |
世良 啓太 |
奈良教育大学・専任講師 |
森山 潤 |
学校における教科教育実践の検討 |
長井 映雄 |
和歌山県立和歌山高等学校・教諭 |
菊地 章 |
学校における教科教育実践の検討 |
※職名は平成31年4月1日現在による。
研究成果報告
・研究成果報告書として「博士号につながる「教科教育実践学」論文の書き方 -院生・修了生・教員が明かすアクセプトの秘訣-」(九州大学出版会)及び「学びを広げる教科の架け橋 ─教科架橋型教科教育実践学の構築─」(九州大学出版会)が出版されました。