平成31年度採択プロジェクト
- プロジェクトの名称
- 近年の自然災害を踏まえた防災,減災教育と学校危機管理の構築
- プロジェクトの期間
- 平成31年4月1日~令和4年3月31日
プロジェクトの概要
プロジェクト研究の概要
国内では,東日本大震災発生後も多くの自然災害が生じ,国(文科省),都道府県等の教育委員会,各学校教育現場は地域や学校の実情に応じた様々な対応が求められている。本プロジェクトは国や各地域の教育委員会や学校と連携して,防災・減災教育を中心としたこれからの学校安全,学校危機管理に対応する教育システムの構築を図るものである。同時に科学的リテラシー育成を中心として,学力向上を意図し,小学校から高等学校まで連動し,カリキュラム・マネジメントを意図した教材やプログラムを掌握・整理・開発する。日本ではナショナルカリキュラムと言うべき学習指導要領が存在するが,唯一の課題は全国画一的な普遍的,一般性が重視されるあまり,地域ごとの特色に裏付けられた教育内容,方法等の開発が不十分と言えることである。例えば,本研究で取り扱う地震・津波,火山噴火,豪雨・豪雪,土石流・地すべりなどの自然災害がその例であり,移動の著しい時代,次世代の子供達には,地域性も重視した普遍性を持った教育が求められる。本研究では,その一つとして防災・減災教育を位置付ける。
特に1995年の阪神淡路大震災では,兵庫教育大学が学校防災に対応し,2004年,新潟福島豪雨,中越地震,中越沖地震等では上越教育大学が学校復興への取組に余儀なくされた。来るべき南海トラフ型の地震・津波に備えた学校防災の確立は鳴門教育大学の喫緊の課題とも意識されている。さらに,2018年の西日本豪雨では,岡山大学も地域の防災についての課題を見直す必要が生じ,2013年に日本初の大雨特別警報が発表された滋賀県においては滋賀大学も対応に追われた。これらの学校防災の課題も本研究を通して共有する。
さらに,これからの教育にはグローバル化が期待され,SDGsやESDのねらいも重視した具体的な取組が求められている。その実践的な教育活動として,防災・減災教育,復興教育が存在する。本研究プロジェクトでは,地域の特殊性を重視しながらも,国際的な普遍性を意識するいわばグローカルな教育開発を目指す。これは教員養成や教員研修の観点としても重要な意味があることを明確にする。
本研究プロジェクトは,これらを踏まえて,今日求められる新たな員養成・教員研修に貢献するものとなる。つまり,学校教育現場での児童・生徒の発達の段階を踏まえた教育プログラムの開発,それを実現させるための教員養成システムや教材の開発にもつなげる。それらは,教職大学院の学校安全や学校危機管理などのカリキュラムにも貢献するものであり,免許更新講習や教育委員会と連携した教員研修の場においても活用されたり,展開されたりすることが目的となっている。
以上,本研究プログラムでは,国際的な動向を踏まえ,台湾等を中心としたアジアをはじめ海外の教員養成の中での取扱いも視野に入れながら,連合大学院の特性を活かした防災,減災教育に関する教員養成,教員研修の体系化,スタンダート化を図るものである。
期待される成果
プロジェクトの実施により期待される成果
日本の学校防災に関する情報を整理,体系化して,今後の国内の学校安全,学校危機管理に対応する取組を明確にする。
教員養成系大学において,科学的リテラシー育成に基づいた「学校安全」「学校危機管理」の教育・研究の体系化,スタンダード化を図り,具現化する。
教職大学院においても同様に,上記の教育・研究に貢献する。例えば,現在,研究代表者が所属する教職大学院学校経営力開発コースにおいては「学校安全・危機管理」,「防災管理・防災教育と組織活動」,「現代社会と教員役割」を開設しているが,常に新たな事例研究モデルが必要となっている。授業は「地域協働実習」など理論と実践を融合した取組が求められている。本連合大学院構成大学だけではなく,他大学にも具体的な示唆を与える。本連合研究プロジェクトにおいて,この方面の研究を進めることは,他大学の教職大学院等追従を許さないものと考えられる。
また,国連防災世界会議が,第1回目から3回目まで日本で開催されており,日本は学校教育での防災・復興教育の領域においてもリーダーシップが期待されている。実際第2回目に開催された神戸市でも国連ESDの10年と連動した「兵庫行動枠組」が採択され,その後の「仙台宣言」に引き継がれている。SDGs,ESDが教育界に大きく期待される中,防災,気候変動等に留まらず,国際貢献,国際協力・理解の新たな教育研究の構築となる。
ただ,現在,防災教育は,教育行政の縦割りの中から,学校現場では実践に戸惑いがある。例えば,文科省でも,防災教育は,学校安全・食育・学校保健(スポーツ・青少年局→初等中等教育局→総合教育政策局)の流れと学習指導要領等教育課程担当(初等中等教育局)との2つの流れがあり,各都道府県教育委員会等においても同様である。本研究では,学力向上も意図した文字通り「生きる力を育む」防災,減災教育の在り方も明確にする。