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令和2年度大学院連合学校教育学研究科学位記授与式式辞

 令和2年度の課程修了によって学位を授与された方16名、論文提出によって学位を授与された方1名、合わせて17名の皆さま、本当におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

 皆さまのほとんどはお仕事をお持ちです。仕事を続けながらの学位取得ですので、達成感もひとしおではないかと察します。博士号を得て、人生を再出発される皆さまに対しまして、本日は私から次のことを申し上げたいと思います。

 それは、博士号は言うまでもなく研究者としての出発点であって、その後の社会や研究環境の変化に応じて、新しい研究分野や研究方法にチャレンジしていただきたいということです。

 私どもは研究者のゴールやターミナルとして博士号を出しているのではありません。博士号は、社会や人類に貢献できる研究を推進する基盤としての研究遂行能力を証明するものです。このことを強く認識していただきたい。

 これからの社会は非常に激しく変化してまいります。予期しない変化が多々起こるでしょう。それに応じて研究を取り巻く環境も絶えず変わり続けます。このたびのコロナ禍はそれを如実に示しています。たとえば、コロナ禍による長期の休業や活動制限は、子どもたちの心身にこれまでの常識では捉えられない変容を引き起こしている可能性があります。それを究明して問題解決を図る研究が必要になります。

 コロナ禍によって文部科学省のGIGAスクール構想が前倒しされて、今年度、児童生徒1人1台のPCやタブレット等の端末がほぼすべての学校に整備されました。これからの学校教育では、児童生徒1人1台の端末の活用を前提とした指導が行われることになります。子ども一人一人の学びや育ちのデータが蓄積されます。それが学級単位、学年単位、学校単位で集積されてビッグデータとなり、AIによってそれが解析されます。解析結果を基に新しい指導方法や学校運営の方法が開発されるという、データベース、エビデンスベースの学習指導・生徒指導の改善や学校改善が普遍化していくといわれています。

 外部から学校に関わる研究者は、このプロセスの中に入っていかなければなりません。端末によるデータ収集、AIによるデータ解析、それに基づく改善のプロセスの中に入る必要があります。このアプローチは、これまでのアンケートやインタビューによるデータ収集や研究者の観察によるフィールドワークとは全く異なります。

 他にも学校教育の変化があるでしょうが、変化を正しく認識し、本学の博士取得のプロセスで培った研究能力を基盤にして、新しい研究分野・テーマや研究方法に果敢にチャレンジしていただきたい。そのことによって、自分を成長・発展させ、学校や子どもたちに貢献することを切にお願いしたい。変化の時代においては、研究分野を広げる、新しい研究方法に挑むことがないと、博士の学位を生かすことにはならないのではないでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

 最後になりますが、改めて研究倫理についての意識喚起をお願いします。現在も、実験データの改ざんであるとか、盗作、剽窃、研究費に関わる不正の事案がマスコミ等を賑わし続けています。自覚されていると思いますが、これを行いますと研究者としては終わりです。自分だけではなくて、自分の所属する組織、たとえば大学に大きな迷惑がかかります。場合によっては博士取得において指導を受けた先生方にも影響が及ぶこともあり得ます。研究倫理に強く留意いただいて、所定の手続きや規則を必ず順守してください。十分に理解されていることは承知の上で、敢えて申し上げました。

 それでは、皆さまの今後の研究生活がさらに発展することを祈念いたしまして、私からのお祝いの言葉といたします。おめでとうございました。

令和3年3月21日 兵庫教育大学学長 加治佐哲也

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