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令和5年度学校教育学部学位記授与式式辞

 令和5年度、兵庫教育大学学校教育学部161名の卒業生の皆さま、ご卒業おめでとうございます。兵庫教育大学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。

 私は、兵庫教育大学に勤務して35年ほどになります。その中で、皆さまの学年が一番ノーマルではない学生生活を送られたと思います。入学早々、既にコロナ禍になっておりまして、われわれも初めて経験した休校がありました。休校が明けても対面には戻らず、オンラインの授業でした。その後、対面とオンラインとの併用となり、ハイブリッドの授業を経験されました。そして、後半の3年生ごろから、対面授業が継続的に行えるようになって、落ち着いてきました。本当に多様な学びのスタイルを経験されて、いろいろなご苦労があったかと思います。

 この苦労は決して無駄にはなりません。皆さまは、これからオンラインと対面を併せた学びを行う側に回りますので、この経験をぜひ生かしてください。

 保護者の皆さま、本日はたくさん方のご参列を頂きまして、ありがとうございます。ライブ配信を通じてオンラインでもたくさんご参加いただいております。お子さまのご卒業、おめでとうございます。4年間、本当にご支援、ご協力ありがとうございました。兵庫教育大学は、こういう地にある、小さな大学ではありますが、文部科学大臣から教員養成フラッグシップ大学に指定されており、日本の最先端を行く教育研究を進めております。お子さまのご卒業後も、ご縁を持っていただけると大変ありがたく思います。

 さて、卒業生の皆さまは4年間、本学の教員養成のスタンダードに基づいた学びをされましたので、教員養成スタンダードの中心に「学び続ける教師」とあるのはよくご存じだと思います。これからも、どの職業に就こうと、大学院に行けばもちろんのことですが、学び続けていただかなければなりません。

 学生時代の学びと仕事に就いてからの学びは違います。いろいろと違うのですが、2つほど申し上げます。1つは、学生時代の学びは、全くないわけではないですが、基本的には自分が選んで入った大学で自分が選んだ専門分野を勉強しますので、自分の好きなこと、やりたいことを学ぶことになります。一方、仕事に入りますと、必ずしも自分がやりたいことだけではなくて、必要を感じていないものや、気が進まないものを強制される、義務化されることがあります。

 教職を例にとりますと、初任者研修とか10年目研修、他にもいくつかありますが、受けることは義務です。仕事をしていますので忙しいのです。忙しい中で受けなければなりません。しかも、それは必ずしも自分が学びたい内容ではないかもしれない。これが学生時代の学びと根本的に違うところです。

 このときに、やらされ感で受けるのか、それとも、与えられたもの、義務化されたものを主体的に自分の中に取り込んで、それを生かしていくのか、自分の成長にとって、ここが大きな分かれ目となります。

 これから皆さまは職場に入ります。学校ですと、皆さまが「この先生は素晴らしいな、尊敬に値するな」と感じる先生がいますので、その先生の学びの仕方を見てください。その先生は、義務的な研修を受けているときに、嫌な顔をしないはずです。忙しくても、その研修をなおざりにしないはずです。教育委員会が「あなたは主任になったから、こういう研修を受けなさい」と指示したときに、忙しいけれども、これは役に立つものだと思ってきちんと研修に向き合うのです。必ずしも研修の講師が上手とは限りません。話が下手な人もいます。しかし、下手だからといって、ばかにしない。無駄にしない。極論すると、下手な理由を探ってそれを自分に活かす力を持っているのです。

 他方で、そうではない先生も私はたくさん見てきましたが、そういう先生は研修を「つまらない」とサボります。寝ています。不平不満を言います。もちろん、それはそれで1つの評価ではあります。しかし、それだと費やした時間とエネルギーが無駄になってしまうのです。自分が受けないという選択は、義務研修ではあり得ません。

 自分が自分に活かすものとしていかに前向きに捉えているかということです。これを「学びに主体性がある」といいます。

 これからいろいろな学びをします。必ずしも自分が望んでいるものだけではなく、忙しい中でもやらなければならないことが多々あると思いますが、それを逃れられない以上、必ず自分のものとして学ぶようにしてください。主体的な学びをしてくださいということです。

 皆さまは、これからいろいろな進路に向かいますが、本学の卒業生の場合、4つのパターンがあります。

 1つが、教師に正規採用されて来年度から就職する方、保育士に採用されて就職される方です。それぞれの学校や保育所等で頑張っていただきたいと思います。ただ、そうそう順調にはいきません。特に最初が大変です。率直に申し上げますが、私も学長になって1年目、2年目はとくに大変でした。そこでの経験は必ず生きますので、いろいろな方と相談して乗り切ってください。そしてまた、よりレベルの高い学びを求めて本学の大学院に来てください。

 2つ目のパターンは、教師にはなるのですが、教員採用試験に合格できなくて、臨時講師に就かれる方です。臨時講師が減っているのです。これが、今の教師不足の一番の原因です。校長先生や教育委員会の方は、臨時講師を経験した方をむしろ歓迎します。なぜかというと、苦労しているし、いろいろな経験を積んでいるので、即戦力になります。そのために、教育委員会は採用試験で臨採経験のある方に加点しています。加点割合が、最近は高くなっています。本学の卒業生の中で臨時講師を経験し、その後正規採用されて、大活躍している人はたくさんいます。

 3番目のパターンは、教職に就かずに民間の企業に入られたり、公務員などになられる方です。自分が選択した進路ですので、それぞれの道で頑張っていただきたいと思います。教員免許を取得しています。これからの長い人生、いろいろなことがありますので、また教師になりたいという思いも起こってくるでしょう。そのときは、果敢にチャレンジしてください。教員免許は更新制がなくなりましたので、一生有効で、かつ採用試験の年齢制限もほぼありませんので、いくつになっても教職に就くことができます。また、他の世界を経験した方を学校や教育委員会は歓迎します。なぜかというと、教師集団の多様性が高まるからです。

 最後、4つ目のパターンは、大学院に行かれる方です。本学の大学院に進まれる方が増えておりまして、われわれは喜んでいます。教職のスタンダードは学部卒ではありません。大学院の学びをした方が教職のスタンダードです。これからすぐに大学院に行かれる方は、そのスタンダードを獲得することになります。皆さまは、教職大学院などの大学院に進学して教師になった人の第一種奨学金、最高月額が8万8000円ですが、これの返還を免除する方針が文部科学省から出されたという、つい先日のニュースを聞きましたか。おそらく、来年度から実現します。なぜ、ここまでして大学院に行って教職に就く人を優遇するのかといいますと、国として教職の標準を大学院レベルにしようとしているからです。

 これからの皆さま方の人生において、本学の4年間の学びが支えとなることを祈念いたしまして、私のお祝いの言葉とします。どうぞご活躍ください。 

令和6年3月22日 国立大学法人兵庫教育大学学長 加治佐哲也

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