【プレスリリース】放棄された道路を斜面からの土砂供給量の推定に活用する手法を開発
レーザ測量機能を搭載したドローンを使って、数十年間使われていない道路(いわゆる廃道)に堆積した土砂の量を測量し、斜面からの土砂供給量を推定することに成功しました。土石流発生源での土砂供給量を推定する上で、この手法が役立つことが期待されます。
研究内容と成果
本研究では、静岡県と長野県の県境付近にある静岡県道288号線の通行止め区間のうち約4.75kmの区間を対象に、レーザ測量機能を搭載したドローン(UAV LiDAR)(※1)による地形測量を実施しました。
この道路は、日本列島の中で最も隆起速度が大きい赤石山脈南部の天竜川沿いに位置しており、道路の背後には急傾斜で起伏の大きな斜面が広がっています。1991年に発生した災害によって通行不能となり、それ以降は斜面から供給された落石が道路上に堆積し続けています。地形測量では、対象の道路区間を96区間に分割し、各区間の地形条件と供給された土砂の堆積物の状況、土砂供給量との関係を調べました(図1)。
その結果、道路の斜面側の平均傾斜が大きくなるほど、また、集水面積(※2)が大きくなるほど落石による土砂供給が活発になり、道路が土砂によって覆われやすくなる(図2)ことがわかりました。また、集水面積1万㎡以上の区間では、水流によって運ばれた土砂も堆積するようになり、2万6,000㎡以上の条件では、すべての区間において土石流や水流によって運ばれた土砂が堆積していることが明らかになりました。さらに、土砂供給量の分析結果に基づき、土石流の発生源になりやすい源頭部(谷の上流部)に相当する集水面積1万〜2万㎡の地形条件において、1年間当たり70〜93立方メートルの土砂が供給されていると推定しました。その結果、この地域の集水面積2万㎡の谷型斜面では、数十年程度で土石流1回分に相当する土砂が蓄積することがわかりました。

(図1)本研究での測量に関する概要
左図(a)は道路の模式図であり、元の道路面に対して、堆積が生じている状況を模式的に示している。今回の分析では道路背後の地形条件に応じて、道路区間を複数に分割した。右図(b)では、UAV-LiDARを用いて道路面周辺の測量を行っている様子を示している。堆積物に隠れている元の道路面の高さを、周辺の堆積物に覆われていない道路面の標高から内挿して推定した。

(図2)実際の堆積状況を示す現地写真
左図(a)は堆積物の位置とその背後の地形を示した地図であり、元の道路面に対して、背後に急傾斜かつ集水面積の大きい斜面がある場合に、道路上に堆積が多く生じている状況を示している。右図(b)は、左図(a)の矢印の方向に現地の状況を撮影した写真であり、斜面から道路面上に多量の堆積物が供給されている様子を示している。
- (※1)UAV LiDAR:レーザ測量(LiDAR)機能を搭載したドローン。測量に用いられるレーザ光は樹木の樹冠を通過できるため、樹冠に隠れていて可視光では見られない地表面の測量が可能である。本研究では、おおむね高度80mの上空からレーザ測量を行い、道路周辺で1㎡当たり平均215.2点の高精細測量を行った。
- (※2)集水面積:斜面の形状はさまざまであり、谷のような形をした斜面では水や土砂が集まりやすい。集水面積とは斜面上のある地点あるいは区間の上方、上流側に含まれる面積であり、集水面積が大きい区間では水が集まりやすく、斜面崩壊や土石流が発生しやすくなる。
論文情報
【タイトル】An abandoned road as a debris trap: Estimating debris-supply rate from steep slopes based on UAV-LiDAR DEMs(土砂トラップとしての廃道:UAV-LiDAR DEMを用いた急斜面からの土砂供給量の推定)
【著者】S. Harada, T. Hattanji, T. Ogura, and Y.S. Hayakawa
【掲載誌】Geomorphology
【掲載日】2026年2月4日(オンライン先行公開)
【DOI】https://doi.org/10.1016/j.geomorph.2026.110193
本学研究者
小倉拓郎(社会系教科マネジメントコース 准教授)


