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令和4年度学校教育学部学位記授与式式辞

 兵庫教育大学学校教育学部、令和4年度164名の卒業生の皆さま、ご卒業本当におめでとうございます。兵庫教育大学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。

 皆さまの4年間の学生生活はいかがだったでしょうか。最初の1年間は対面授業でしたが、その後コロナ禍で、オンラインのみの授業を受けられました。そしてオンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型の授業もたくさん受けられました。ご承知のように、コロナは5月には特別な伝染病の扱いではなくなりますが、初等中等教育の学校でも大学でも、授業や学びのスタイルがコロナ前に戻ることはありません。皆さま方はこれから多くの方がオンライン授業やハイブリッド授業を提供する側、行う側に回ります。そのときに、感じた思いや培ったスキルをぜひ生かしてください。生かされてこそ、この経験が意味をもつことになります。

 保護者の皆様、今日は多数ご参列いただきましてありがとうございます。4年間、本学の教育活動にご協力いただきまして、本当にありがとうございました。コロナ禍で多くのご苦労もあったことと思います。おかげさまで、兵庫教育大学は高い教員就職率を回復したり、文部科学大臣から「教員養成フラッグシップ大学」に指定されるなど、順調に発展しております。できますれば、お子さまの卒業で本学との縁が終わるのではなくて、今後とも本学のことを気にかけていただけると有り難いと思います。

 さて、卒業生の皆さんは、授業観・学習観の転換が今求められていることをご存じですか。大学の授業で学んだ方も多いと思います。学校教育は、子どもたちに、これまではどちらかというと、一斉授業で教師が知識を伝達する、注入する、あるいは教師が子どもたちを教え導くという性格が強かったと思います。しかし、変化が激しく、予測が難しい社会を生き抜く子どもたちには問題解決力を身につけることが必要であるとして、子供たちの学びは子ども自らが主体的・自律的に行う、子ども一人一人のニーズに合った個別最適な学びと、子どもたち同士での協働的な学びに変わらなければなりません。そこでは、教師は子どもたちの学びの支援者、学びによる子どもたちの発達や成長の伴走者ということになります。このような子どもの学びや伴走者としての教師の支援を手助けするのがデジタルの教材や機器です。簡単にいえば、これが授業観・学習観の転換ということです。

 実は、デジタルを活用した個別最適な学びと協働的な学びは、教師の学びにおいても実現すべきとされております。昨年12月の中央教育審議会の答申がそのように提言しました。同答申は、教師の学びの姿は子どもたちの学びの姿の相似形であるとして、教師自身の学びにおいても見方を転換する、つまり研修観を転換することが必要であるとしています。すなわち、教師の学びにおいても、与えられる研修、受け身的な学びではなくて、教師が主体的・自律的に行う、教師一人一人にとっての個別最適な学びと、校内研修や授業研究など現場での活動における教師間の協働的な学びを中心にすべきということです。

 このような教師の学びを「新たな教師の学びの姿」と呼んでおります。新たな教師の学びの姿を推進するために、一人一人の教師の研修の履歴を載せた研修受講履歴記録システムと、幅広いかつ多様な内容の研修コンテンツを搭載した教員研修プラットフォームがつくられます。教師はオンラインを活用して教員研修プラットフォームにアクセスして、自分の必要とする研修を受講することになります。新たな教師の学びの姿は来年度から始まりますが、教員研修プラットフォームの本格運用は再来年度からになると思います。

 皆さまは、この4年間、本学の教員養成スタンダードを基にしたカリキュラムで学ばれました。教員養成スタンダードの中心に何が書いてあるかはご存じですね。「学び続ける教師」です。新たな教師の学び姿の考え方は、本学教員養成スタンダードの学び続ける教師の考え方と一致するものです。多くの方が教職に就かれますが、学び続ける教師として新たな教師の学びの姿を最大限に活用してください。

 さて、皆さまの直近の進路は大きく分けて四つあります。一つは、教員採用試験や保育士試験に見事合格されて、正規の教員・保育士として学校現場等に入られる方です。本当に頑張っていただきたいし、主体的な学びをしていただきたいと思いますが、大体若い頃の1年目とか2年目とかの頃に困難が来るといわれています。そのエビデンスがあります。そのときに自分に閉じこもらずに、友だちや先輩、大学の先生などに相談をすることが大事です。その時の苦労は必ず次につながりますので、ぜひそこを乗り越えてください。現職の先生になられてから大学院での学びもありますので、ぜひ兵庫教育大学に戻ってきてください。

 二つ目の進路は、講師として常勤の場合もあれば、非常勤の場合もありますが、学校現場に入られる方です。ご存じだと思いますが、この形で教職に就かれる方が減ってきていまして、日本中の教育委員会と学校が大変苦労しています。教師不足の一番の原因です。実は、教育委員会や学校の校長先生方が欲しい先生は、臨採を経て講師として頑張って、経験と積み、困難なことにめげずに正規の教員になろうとする方なのです。どこの教育委員会も臨採での講師の経験を、教員採用試験において加点しています。その加点の割合がだんだん高くなっています。必ず正規教員になれますので、ぜひ諦めずに頑張ってください。

 それから三つ目の進路は教職ではなくて民間の企業とか、公務員として仕事に就かれる方々です。それぞれの職業で頑張っていただきたいと思うのですが、教員免許をもっていることを忘れないでください。学校の先生の集団、教職員集団を、今どういう集団にしようとしているかといいますと、多様な背景と高い専門性をもった教職員集団です。つまりダイバーシティの高い教職員集団です。民間企業等での経験は評価され、尊重されます。民間企業を経験した人が先生になれば、教職員集団の多様性が増します。ご存じと思いますが、教員免許更新制が廃止されますので、これまでのように10年有効ではなくて生涯有効になります。思い立ったら教職を志望してみてください。その際に先ほどいいましたように、高い専門性が求められますから、高い専門性を身に付けるようにしてください。民間企業に就いたら、その分野で得意分野というか秀でたもの、情報でもいいし、カウンセリングでもいいし、そういうものをもってぜひまた教職に戻ってくると大変重宝されると思います。

 四つ目の進路は大学院に進まれる方です。最近大学院に進まれる方が増えておりまして大変結構なことと思っております。教職という仕事にとって、大学院を修了すること、つまり修士号と専修免許状をもつことはスタンダードになっています。標準です。学部卒がスタンダードではなくて、大学院を修了することがスタンダードとお考えいただきたい。ですから、これから大学院に行かれる方は、早くそういうスタンダードを得ることになりますので、そのつもりで頑張っていただきたい。特に、高度な研究力を身に付けて、それをリーダーとして学校現場等で生かしてください。よろしくお願いいたします。

 それでは、皆さんのこれからの人生が豊かになることを本当に願っております。その際に、この4年間の学びが、その支えとなることを期待しております。本日はおめでとうございました。頑張ってください。

令和5年3月23日 国立大学法人兵庫教育大学学長 加治佐哲也

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