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令和4年度大学院学校教育研究科(昼間)学位記授与式式辞

 兵庫教育大学大学院学校教育研究科、令和4年度164名の修了生の皆さま、修了と学位の取得、本当におめでとうございます。また教員研修留学生の5名の修了生の皆さま、本当におめでとうございます。本学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。

 皆さまが本学大学院に在学された2年間ないし3年間においては、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型の授業や研究指導が平常のこと、ノーマルとなりました。ご承知のように、コロナは5月には特別な伝染病の扱いではなくなりますが、初等中等教育の学校でも大学でも、授業や学びのスタイルがコロナ前に戻ることはありませんので、この経験を前向きに捉えていただきたい。皆さまの多くは、これからオンライン授業や対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド授業をする側に回りますので、この経験やそこで得たスキルを生かしていただきたい。

 さて、皆さまはよくお分かりのように、学びは大学院で終わりではありません。これから、さらに学んでいかなければなりません。特に大学院で学ぶ方法を学んだと思いますが、これを土台にさらに学びを深め、自分を成長させていただきたいと思います。その際に、いわゆるDX、デジタルトランスフォーメーション、これを積極的に活用してください。

 小中学校、高校では1人1台の端末を活用した授業が進んでいます。

 ご承知のように、授業観・学習観の転換が求められています。すなわち、子供たちの学びは子ども自らが主体的・自律的に行うことが基本であるとして、1人1台のデジタル端末を活用して、子ども一人一人のニーズに応じた個別最適な学びと、子ども同士の協働的な学びに変わることが目指されています。

 実は、デジタルを活用した個別最適な学びと協働的な学びは、教師の学びにおいても実現すべきとされております。昨年12月の中央教育審議会の答申がそのように提言しました。同答申は、教師の学びの姿は子どもたちの学びの姿の相似形であるとして、教師自身の学びにおいても見方を転換する、つまり研修観を転換することが必要であるとしています。

 新たな研修観を基にしているのが「新たな教師の学びの姿」です。私は文科省の中教審で新たな学びの姿の構想に関わりましたので、その真意を伝えたいと強く思っています。新たな教師の学びの姿においては、教師一人一人にとっての個別最適な学びと、校内研修や授業研究など現場での活動における教師間の協働的な学びを通して、「主体的・対話的で深い学び」が目指されます。

 そのためのツールが、教育公務員特例法の改正によって制度化されました、研修受講履歴記録システムとワンストップの教員研修プラットフォームを活用しての校長と教員との対話による研修奨励の仕組みです。来年度から始まりますが、教員研修プラットフォームの本格運用は再来年度になると思います。

 この研修の仕組みを少し具体的に述べます。

 教職員支援機構、本学をはじめとした大学、教育委員会の教育センター、民間企業等の機関が、非常に幅広いかつ多様な内容の教員研修コンテンツをつくりまして、それをワンストップのプラットフォームで提供します。校内研修や授業研究など現場での活動における教師間の協働的な学びもプラットホームには載せられます。

 全国の教師がプラットフォームの中の広範・多様な研修プログラムをオンライン上で登録し、受講することになります。その際、一人一人の先生方が校長等と話し合って、自分のニーズや課題に応じてプログラムを選択しします。これがうまくいけば、先生方にとっての個別最適な学びとなります。自校や他校の教師とプラットホームの中で交流すれば、協働的な学びにもなります。

 受講した学びの内容は研修受講履歴記録システムに記録されます。学びの成果が、デジタルバッジなどの形で認証されます。そして、学びの成果は校務分掌であるとか、人事異動であるとか、校内での研修であるとか、そういうもので活用されます。

 画期的な教員研修の仕組みであることはご理解いただけると思います。

 うまく行けば画期的なものとなりますが、国から、つまり上から降りてきた仕組みであるので、これまでも事例があるように形骸化することにもなりかねません。その最大の原因と想定されるのが、この新たな教師の学びの本質を理解することなく、受け身的に、つまりやらされ感で行ってしまうことです。教員免許更新制は廃止されましたが、その理由の一つは更新講習30時間がやらされ感で受ける教員が多くなったというものでした。

 私が先ほど申し上げた研修観の転換を思い起こしてください。新たな学びの姿の核心は、一人一人の教師が自らの必要に応じて主体的・自律的に学びをつくることです。つまり、自らの学びを自らマネジメントすることです。これが基本中の基本です。

 皆さまは大学院で学ばれました。特に修士論文や実践研究報告書を作成する中でわかったと思いますが、学びは本来、自分でつくって自分で管理するものです。つまり、主体的で自律的なものです。皆さまが現場に帰られて、あるいはこれから教職等に就かれて、ぜひそういう主体的で自律的な学びの姿をこの新しい学びの仕組みの中で体現していただき、主体的・自律的な学びのモデルになっていただきたい。学校経営コースなどを修了してこれから管理職になられる方は、主体的・自律的な学びが尊重される学校文化をつくっていただきたい。そうすることでこの新しい学びの姿の仕組みが機能しますし、それが結局はわが国の教師全体の力量を向上させることにつながります。そのように、ぜひお考えいただきたいと思います。

 さて、5名の教員研修留学生の皆さま、コロナ禍で、神戸大学での半年間を含めまして本当にいろいろ大変だったと思います。それこそ、想定していた日本での生活とはだいぶ違ったことでしょう。ただ反面、普段の日本の姿でない姿も見られたと思いますので、そこを前向きに捉えていただいて、ぜひお国で生かしていただきたいと思います。今後も兵庫教育大学とのお付き合いをよろしくお願いします。

 それでは、皆さまのこれからの人生が豊かなものになることを祈念いたします。その際に、本学での2年ないし3年の学びが強い支えとなることを祈念いたしまして、私のお祝いの言葉といたします。どうもおめでとうございました。

令和5年3月23日 国立大学法人兵庫教育大学学長 加治佐哲也

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