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在学生からの大学生活短信

ライオンの絵があった。 《向井 良慶子さん》

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向井 良慶子さん

大学院学校教育研究科修士課程
教育内容・方法開発専攻
認識形成系教育コース
自然系教育分野(理科)

中学生の頃、私は典型的な優等生でした。同級生や、先生、親、みんなからいつも期待されていました。しかし一方で、学校にも家にも、私の居場所はありませんでした。

兄妹五人と、親のいない二人の従姉妹と、母と祖母の暮らす狭い家ではケンカが絶えず、毎日のように誰かが泣き叫び罵り合っていました。
学校では優等生でしたから、誰にも悩みを話せず、家以外に逃げる場所もありませんでした。今でも思い出すのですが、小さな実家の勉強机の上にはライオンの絵が貼ってありました。辛い時は、オレンジ色の草原からこちらを見つめるライオンを、ただただ眺めていました。その時だけは、罵り合う声も、泣きそうな気持ちもどこかに消えていました。

教員の道を目指したのは、他の皆さんの様な立派な目標があった訳ではありません。私はただあの頃の自分を助けてあげられる大人になりたかったのです。
中学の頃に出逢った恩師が、そんな私の事情を知り、学校と家庭以外に目を向けるきっかけを沢山下さいました。世界は学校と家だけじゃない。それ以外の場所に、あなたの居場所は沢山ある。そう教えてもらえた気がします。
卒業するとき、先生から『あなたの、30歳になった時の姿が楽しみ』と言ってもらえました。初めて生徒でもなく、子どもでもなく、一人の人として接してもらえた気がしました。
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その先生が大好きで、先生が教えてくれた理科が一番好きな教科でした。あんな大人になりたい。そんな思いが私を中学校の理科の教員の道に進めてくれたのかもしれません。

兵教では沢山の人と出逢い、また海外にも目を向けるチャンスが沢山ありました。実はこの間まで韓国に短期留学していました。その時、自分の価値観がいかに狭く凝り固まったものかと気づかされました。また、言葉の壁で授業が分からないという気持ちも痛感しました。理科嫌いになる子どもたちの気持ちを少しは知ることができたかもしれません。

あと5年で30歳。最近よくライオンの絵を思い出します。あの時私を救ってくれた恩師のように、優しく力強い眼差しを持った大人になっていたいです。

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